1970年代に、荒れていた京都の伏見工業高校へ赴任し、ラグビー日本一に導いた山口良治が、5月29日に亡くなった。山口は、ドラマ「スクール☆ウォーズ」のモデルになり、「熱血教師」「泣き虫先生」として、世に知られる。
現在、中小企業の代表を務める荒木邦彦は、中学生時代に山口と知り合い、その後、進学した伏見工業高校でラグビーを始めることになる。
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入学初日に無期停学
入学式の日、ボンタンズボンに変形学ラン姿で校門をくぐると上級生数人が待ち構えていたように自分を取り囲んだ。
「お前が荒木か」
いきなりもみ合いになった。自分より身体の小さい相手は殴らないというのが流儀だったが、10人近くが相手では、やるしかなかった。
騒動の後、校長室に呼ばれた。その場で無期停学を言い渡された。
「こいつは自分から手を出していません! 停学はあんまりです」
山口が校長に食い下がってくれたが、大勢に囲まれる中で繰り出した一発が相手の頭に当たり、頭蓋骨骨折という怪我を負わせていたことから決定は覆らなかった。
停学中の荒木は折れ曲がった心のまま夜の街を遊び歩いた。中学時代の不良仲間とバイクに乗り、どこかの組に所属しているという強面の大人たちとも知り合いになった。自分はこのまま社会の裏側で生きていくのかもしれない、それならそれでいいと自暴自棄にもなっていた。
そんなある日、夜遅く家に帰ると玄関に家族のものではない大きな靴があった。居間を覗くと山口が父親と酒を飲んでいる。「煮るなり焼くなり、あいつを叩き直してください」という父親の声が聞こえた。
この教師は無期停学となった不良生徒をまだラグビー部の一員だと思っている。こっちはその気などまるでないのに、あの時の約束を馬鹿正直に信じている。怖いもの知らずの荒木が初めて恐ろしさを覚えた。
停学は1学期いっぱいで解除となった。そのとき山口が言った。
「一つだけ約束してくれ。1週間でいいから、俺に命を預けてみろ」
