昭和29年、埼玉県で19歳の女性が殺害され、乳房や下腹部が切り取られるという凄惨な事件が発生した。逮捕されたのは、一方的な片思いをこじらせてストーカーと化した29歳の男・古屋栄雄。

写真はイメージ ©getty

 後に「日本犯罪史上初のストーカー殺人」と呼ばれるこの事件は、あまりにも歪んだ愛と誤算が生んだ悲劇だった。

殺した相手は「別人」だった

 古屋は1924年(大正13年)、現在の山梨県甲州市塩山に生まれた。小学校の成績は285人中最下位で、卒業後は窃盗に手を染め少年院に送致されるなど、波乱に満ちた半生を送った。彼の人生が決定的に狂い始めたのは、1950年春、25歳のときにダンスホールで出会った女性(当時18歳)への一目惚れがきっかけだった。

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 彼女に交際を拒まれても、古屋の執着は収まらなかった。彼女の居場所を追い求め、紹介された職場で1年間真面目に働いたが、義兄はついにその所在を明かさなかった。

 焦燥と狂気が限界を超えた1954年9月5日夜、古屋は埼玉・川越市付近を徘徊中、白いブラウスに黒のスカート姿の女性を「あの娘に違いない」と確信。後をつけて首を絞めて殺害すると、ナイフで右の乳房と性器を切り落とし、誰とも関係を持てないようにと性器に布を詰めるという残忍な行為に及んだ。

 だが翌日の新聞が伝えた被害者の名前は、全くの別人だった。古屋は「彼女がまだ生きている」という事実に、絶望と同時に淡い期待さえ抱いたという。

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 男は「誰」を殺害したのか……。下記の【関連記事】に続く。

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