唯一無二の「ととのい感」をアシストする「こだわりの機能」とは?

 座った際の無重力感を生んでいるのはフレームとシートをつなぐ伸縮性のあるバンジーコード(ゴム紐)で、開発では苦労したポイントだという。さらにシートに使われたメッシュにもクッション性のあるものを選んだ。腰からお尻にあたる部分のバンジーコードが二重になっているのもこだわりだ。

「そこが柔らかすぎてしまうと、すごく沈んでしまうので二重にすることでバランスをとっています。座ってはダメ、座ってはダメとトライアンドエラーを繰り返して、最高の張りを追求しました」

特に工夫したのは「角度」と、腰掛ける部分の「固さ」だという ©深野未季/文藝春秋

 ヘッドレストの絶妙な高さと硬さやリクライニングの角度など、細部にわたってとにかく座り心地を突き詰めた。「究極とか言っておいて、適当なものを出すわけにはいかなかった」と、試作は6回に及び、開発には約1年をかけたという。

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社内では「大きすぎる」、小売店では「邪魔」といわれたことも

 こうして完成したインフィニティチェアだが、社内での会議では当初評判はあまり芳しくはなかった。折りたたみ式が主流のアウトドアチェアの中で、大型のリクライニングチェアはあまりに異質で、「座り心地がいいのはわかるけれど大きすぎる。どうやってキャンプに持っていくんだ」という声が上がった。

 それでも齊藤さんは「座り心地」の一点突破で挑んだ。

「実際に座ってもらうと、うちの営業の人間もほぼ100%が『座り心地は最高だった』と言ってくれて。私も自信を持てましたし『チャレンジさせてください』と説得し、承認をもらいました」

 こうして2018年に発売にこぎつけたインフィニティチェアだが、最初から大々的に売り出された商品ではなかった。当初はファミリー向けのキービジュアルにもはめ込みづらく、露出は少なかった。量販店の売り場にせっかく置いてもらっても「邪魔」と言われるほどの扱いだったという。

 それでも座り心地を体験した客が徐々に手を伸ばし、初年度は「合格点」の実績を残した。通常、コールマンの商品はキャンプ用品ということもあり、購入者の8割が男性だ。インフィニティチェアは男性6割、女性4割と女性比率が高い。

サイズ自体は大きいものの、簡単に畳めるし意外と軽い ©深野未季/文藝春秋

 また使われる場所も、キャンプ場ではなかった。

「買ってくださっている方は、ほとんど家の庭であったり、ベランダで使われています」

 追い求めた究極の座り心地が、結果としてキャンプ場ではなく家でくつろぐための椅子という新たな市場を開拓したのだ。

 そして発売から2年ほど経った頃、思いがけない場所で使われていると齊藤さんの耳に入った。サウナ施設での利用だった。