2019年4月19日、池袋で当時87歳の飯塚幸三氏の自家用車が暴走し、母子が死亡するなど12人が死傷した「池袋暴走事故」。被害の大きさから日本中から注目された事故はなぜ起きたのか?
記者として長年、同事故を取材してきたTBSテレビの守田哲氏の新刊『池袋高齢者暴走事故 遺族と加害者家族の2060日』(文藝春秋)より、加害者である飯塚氏が運転していた車のドライブレコーダーの映像などをもとに再現した「事故直後の様子」をお届けする。(全3回の1回目/続きを読む)
「なんでこんなことに」
真菜さんと莉子ちゃんの乗る自転車が視界に入ったときの印象を、飯塚は次のように供述している。
「その瞬間、『あーなんでこんなことに』と悪夢を見ているように感じました。右から左に乳母車を押した女性が目に入り、ブレーキを右足で強く踏み出しました。その直後に、ブレーキが抜けて利かない感じがしました」
飯塚が見た悪夢とは何だったのか。ここからは、極めて辛い記述になる。
ドラレコ映像をコマ送りで確認する。自転車が横断歩道を渡り始めるが、信号待ちの車に隠れる。その後、再度すぐに現れ、前カゴが少しだけのぞく。続いて真菜さんが写る。真菜さんは車に気づかず、正面を向いている。コマを進めると、一気に接近して二人の姿が鮮明になる。
後部座席の莉子ちゃんは、帽子の上にヘルメットを被り、チャイルドシートのバーを握っている。そして、よく見ると、彼女の顔は飯塚の車の方向を向いていた。
私は何度も躊躇しながらコマ送りを続けた。
凄まじい衝撃音と飯塚夫妻の「うわあ!」という悲鳴とともに、ドラレコは、真菜さんの歪んだ麦わら帽子を捉えた。
