49歳からの「パラレルキャリア」
一方で、書店開店について興味がない読者にも「パラレルキャリア」については食指が動くかもしれません。単なる「複業」ではなく「両方の仕事が、精神的な意味も含めて互いに補完し合っていて、主従がない」働き方は、店主の安村さんが現在も続けるワークスタイルです。会社員を続けながら、自身の「承認欲求」を満たす最も気持ちが好い居場所もつくる。本と猫(とビール)をこよなく愛する安村さんは、それらに囲まれて暮らせる箱庭を49歳でつくりました。この国で老いていく我々は、延命するベッドより前向きに倒れることができる荒野が必要なのかもしれません。
昨今はYouTubeやネットゲームなど「共有」することがアミューズメントの大前提ですが、読書は(一部の絵本や写真集を除いて)基本的にひとりでしか楽しめません。そんな孤独に陥らざるを得ない本と、「媚びず」、「我が道をいく」猫との相性は当然しっくりくるのでしょう。読後、アレルギー持ちでも入れる新刊コーナーがあると判明しましたし、週末にひとりでゆっくり訪れようとおもいました。
いのうえりつこ/1955年、奈良県生まれ。人物ルポ、葬送文化、本屋をテーマに執筆。著書に『さいごの色街 飛田』『すごい古書店 変な図書館』など。
やすむらまさや/1968年、大阪府生まれ岡山県育ち。本を紹介するゲーム「ビブリオバトル」ではレジェンド的存在。
はばよしたか/1976年生まれ。BACH代表、ブックディレクター。インタビューをもとにした選書業を様々な場所で展開している。