「自分にまったく自信がなくて……周りの視線が本当に怖かったんです」

 そう静かに語ったのは、2016年の映画『イタズラなKiss THE MOVIE』でヒロイン・相原琴子を演じた麻木玲那(旧芸名:美沙玲奈)さん(32)だ。

 明るく前向きな主人公・琴子とは対照的に、学生時代の彼女は自分の容姿に自信が持てず、登下校中も教室でもマスクが手放せなかったという。

ADVERTISEMENT

 誘拐未遂やいじめ、誹謗中傷――。さまざまな経験を経て、「今も自分を好きだとは言えない」と話す麻木さんは、それでも少しずつ前を向き、現在は芸能活動を続けながらも実業家や裏方としての顔も持っている。

 芸能界を離れ母の介護に向き合った時間、そして現在の新たな挑戦まで。その半生を聞いた。(全5回の5回目/最初から読む)

麻木玲那さん ©細田忠/文藝春秋

◆◆◆

母の介護を機に2021年に芸能界を卒業

――2021年に芸能界を離れるという選択をされています。活動休止ではなく引退を選ばれたのはなぜでしょうか。

麻木 母が重い病気にかかり、そばで支えられるのは私しかいない状況だったんです。ちょうど事務所との契約が満了するタイミングでもあったので、「今は仕事よりも母を優先したい」と思い、活動を離れる決断をしました。

 もともと25歳くらいで芸能界を卒業しようと考えていた時期もありましたが、こんな形で一区切りを迎えることになるとは思ってもいませんでした。

――主演女優として走り続けていた日々から、一転して、ご家族を支える立場になられたわけですね。

麻木 母の病気は特殊で、常に命の危険と隣り合わせでした。福岡から東京へ呼び寄せて一緒に暮らし始めたのですが、母の部屋に布団を敷いて、24時間いつでも様子を見られるようにしていたので、夜も熟睡できることはほとんどありませんでした。

 少し物音がするだけで目が覚めて、母の様子を見に行く毎日で、寝たきりの母を一人で介助することは、本当に大変でした。私も必死でしたが、娘に介護される母も、きっとつらかったと思います。