女性社会だった辻遊郭

 ここからが特筆すべきところだが、当時営業していた300軒あまりの遊郭を運営していたのは、すべて女性だった。

 正確には、納税に関する手続きや今でいう保健所などの官公庁へ提出する書類の作成事務の仕事に3、4人の男が関わっていたが、経営者を含め、運営に関わる者はすべて女性だった。

 南国特有のゆったりとした情緒も色濃くあったようだが、規律はとても厳しかったようだ。儒教の影響を強く受けたことで「義理、人情、報恩」が生活の根本となっており、女性たちの結束は非常に固いものだった。

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写真はイメージ ©getty

 ここで働く女性たちは「ジュリ」と呼ばれた。体を売ることで生計を立てていたが、辻のジュリたちはある種の「規範」を持って生活していた。

 ジュリたちは何事も控えめに振る舞い、客の前での高笑いやお酒を含む飲食は一切禁止。囲碁が趣味の客には囲碁に対する見識が必要とされたし、琉歌を詠む客には、返歌の知識をもちあわせていないと勤まらなかった。

 日常生活に支障がなければ、質素でつつましく暮らすことが理想とされていたため、2、3人の馴染みのお客がたびたび訪れてくれれば、それ以上の営業行為はしなかったようだ。「一夜妻になることは恥」という教育を経営者が行っていたため、面識のない者に自分を売ることはほとんどなかったらしい。今風の言葉で言うと「愛人」ということになるのだろう。

 そのような背景があったため、お客であるはずの男側がジュリをものにすることは、とても難しかったようだ。