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東京地検の方針も「不逮捕」
捜査方針の決定をめぐっては、警視庁だけではなく、検察の影響力も大きかった。刑訴法に基づくと、検察官は警察官に対して捜査の指示を行うことができる。いわゆる「検事指揮」と呼ばれるものだ。東京地検の方針は「不逮捕」だった。
捜査幹部は葛藤しつつ現実的な判断に傾いてゆく。
「退院しても逃亡や証拠隠滅は考えにくいと考える。逮捕状を請求しても裁判所が却下する可能性が高い。万が一逮捕状が取れたとしても、検察へ身柄を送った後に釈放になる。多面的に考えると、任意捜査が妥当。逮捕したいところなんだが……」
逮捕しない場合の自殺の可能性についても検討した。しかし、自殺の恐れを理由に逮捕すると、交通死亡事故の加害者は全て逮捕せねばならなくなるため、この議論は一旦却下された。
当時の警視庁トップ、三浦正充警視総監も世論の圧力を意識していたとみられる。「その判断は間違っていないので、何とか持ちこたえてほしい」と激励した。