作品を通して伝えたいこと
――先程、巡回展の話が出ましたが、星野さんの写真展には、小さなお子さんを連れた家族連れや、若者から年配の方まで、様々な方が訪れます。直子さんご自身も、トークイベントを沢山こなされていますが、どのようなお気持ちで、毎回お話しをされていますか。またそのときに自分自身、心がけていることがあれば、教えてください。
星野 イベントでは、写真をスクリーンで見せながら話すのですが、出来るだけ色を付けたくない、ということは思っていますね。本人が何を伝えたかったのかな、っていうことを一番大切にしています。
何度も来てくださる方もいれば、初めて来る方もいらっしゃる。星野がどういうきっかけでアラスカに行くことになったのか、から始まって、どんなテーマでどういうふうに写真を撮ってきたのか――。それから結婚して1年間は撮影に同行できたので、そのときの様子がどうだったのかとか、アラスカで暮していたときの四季や人の暮らしの様子などを、写真を見ていただきながらお話ししています。
あとメッセージとして最後にお伝えすることが多いのですが、エッセイ「ワスレナグサ」(『旅をする木』[文春文庫]所収)の一節を読みます。
〈頬を撫でる極北の風の感触、夏のツンドラの甘い匂い、白夜の淡い光、見過ごしそうな小さなワスレナグサのたたずまい……ふと立ち止まり、少し気持ちを込めて、五感の記憶の中にそんな風景を残してゆきたい。何も生み出すことのない、ただ流れてゆく時を、大切にしたい。あわただしい、人間の日々の営みと並行して、もうひとつの時間が流れていることを、いつも心のどこかで感じていたい〉
写真展を見ているときや、私が話している間とかに、少しでもそういうことを感じ、思いを馳せる時間になったらいいな、と思っています。
――何度も参加されている人にも、初めての方にも、それは素敵な時間になりますね。

