教科書で「星野道夫」を知る子どもたち

星野 中高生に向けて話をするときには、「アラスカからのメッセージ」(『星野道夫著作集5』[新潮社]所収)から読むことが多いです。最後のほうに、「僕が若い人たちに伝えたいこと」とあるのですが、かいつまんでお話しすると、〈人の一生はとても限られている。それを意識することによって、生きていくうえで大きな力になる〉ということ。もう一つは、〈好きなことに出合ったなら、それを大切にしていってほしい。なぜなら、一生のなかで、自分が本当にやりたいことにそれほど何度も出合うことはないから〉というもの。

 このメッセージは、やっぱり若い人に伝えたいな、と思うんです。

――シンプルなのに力強いメッセージですね。若い人だけでなく、どんな年齢の人にも響くと思います。いままで、写真展やトークイベントで、特に印象的だった出会いはありますか。

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星野 はい。2、3人で来ていた若い方が声をかけてきて、「写真展には初めて来たんですが、実は教科書で星野さんの作品に出合っていたんです。こうやって大きな写真を見ることができ、とても心を動かされました」と話してくれました。そうやって若い人たちに実際に見てもらえることは、本当に嬉しいですね。

 教科書は、以前、小学校の教科書に『森へ』(福音館書店)の一部が掲載されていました。現在は中学校と高校の国語、中学の道徳、あと中学と高校の英語の教科書には「星野道夫はどんな人だったか」という紹介が載ったり。たまに美術の教科書に、写真だけ載ることもあります。いろいろな形で長く取り上げていただいて、ありがたいですね。

 『森へ』が載っていたときは、小学生たちから感想文をもらうこともあって、それがすごく嬉しくて。子どもの目線からの感想、読むのが楽しみでした。

 あとは、「親がすごいファンだったんです」「家に本があって知りました」という方も多いです。いろいろな世代の方に、いまも作品が愛され、読まれていることをとても感謝しています。

写真絵本『森へ』は、森のいのちと果てしない時間の流れについて、星野さんが優しく語りかける一冊。

――先程もお話に出たエッセイ集『旅をする木』ですが、単行本が刊行されたのが、1995年8月。亡くなる1年前です。それ以来、文庫・電子・翻訳も含めると、累計部数約50万部というロングセラーとなっています。どういうところが、読者の心に響いているのだと思いますか。

星野 時々、星野の本のなかで何が1番好きですかって聞かれることがあります。1つ選ぶのは難しいのですが、やっぱり『旅をする木』はいつも手元に置いておきたい、本当に大好きな本です。平易な言葉で自然のこと、命のこと、アラスカや極北に生きている人のことを、温かな眼差しで、見たものそのものを私たちに届けてくれる。自分も一緒にいるような気持ちになります。

 友達にあげたくて何冊か買いました、とか、入院している方を励ましたくて、文庫を渡しました、とか、よく聞いたりします。

後編に続く

旅をする木 (文春文庫)

星野 道夫

文藝春秋

1999年3月10日 発売

長い旅の途上 (文春文庫 ほ 8-2)

星野 道夫

文藝春秋

2002年5月10日 発売

魔法のことば (文春文庫)

星野 道夫

文藝春秋

2010年12月3日 発売

次の記事に続く 【没後30年】星野道夫のエッセイ集『旅をする木』がもたらした、新しい出会い