テレビ番組の撮影中に起きたサプライズ
――2022年に、写真家の大竹英洋さんがナビゲーターとなり、星野さんと親交のあった方や撮影場所を訪ねる旅の様子が、NHKの番組〈「ワイルドライフ」~アラスカ 悠久の自然 星野道夫が見たトナカイ大集結!~〉で放送されました。直子さんにとっては懐しかった人や場所も多かったのでは、と思いますが、ご覧になっていかがでしたか。
星野 アラスカには毎年戻っているので、会えている友達もいますが、シシュマレフ村(星野さんが19歳のとき、村長宛てに手紙を送って滞在した場所)にはなかなか行かれないので、クリフォード(星野さんを迎え入れた当時の村長)の元気そうな姿を見られたのは、嬉しかったですね。クリスマスカードは毎年送っていますが、普段の様子はわからないので。
――クリフォードさん、嬉しそうに「ミチオ」のことをお話しされていましたね。
星野 番組では懐かしい人にたくさん会えましたが、一方で、30年でこんなに変わったのか、と感じる部分も多かったです。一つは、カナダのハイダ・グワイという場所に大竹さんが行って撮った、引き潮の入り江のシーン。以前は海底に色鮮やかな生物がいたのですが、今回は色が全然違いました。水温が変わり、水草が生い茂ってしまったからではないかと思います。
カリブーの秋の季節移動を追っているとき、友人のニック・ジャンズがボートを出して、星野が行った同じ場所に、大竹さんを連れていきましたね。大竹さんが撮った写真を見せてもらったのですが、93年に星野が撮った写真と比べると、植生が変わっているのがよくわかります。灌木や木が明らかに多くなっていました。
――いま世界的に温暖化が進んでいますが、アラスカの地も多くの影響を受けているのですね。
星野 番組のなかで驚いたのは、本当に示し合わしようにという感じですが、30年前に星野が撮っていたクジラと同じ個体に、出会ったことですね。クジラの尾びれの模様って、みんな違うんです。
大竹さんには、星野が撮影したクジラの尾びれの写真を数枚、ロケに持って行ってもらっていました。研究者の人たちが持っているデータを見ながら、大竹さんがロケのときに撮った写真と比べてみると、「コルヌコピア」と名づけられているクジラの尾びれ裏の模様がぴったりと同じでした。あの広い海で出合えたなんてもう奇跡で、これはとても印象深かったです。
