25年以上の時を経て発見されたカメラ

――奇跡の出会いといえば、2022年に生前星野さんが使っていたパノラマカメラが、アラスカの自宅から発見されたという大ニュースがありました。見つかった経緯を、教えていただけますか。

星野 はい。亡くなったあと、カメラや機材、原稿は、家中探して、すべて日本に持って帰っていました。でも、パノラマカメラというのは、すっかり頭から抜けていたんです。

 番組のほうから、ところでパノラマカメラはどこにあるんでしょう、と尋ねられて。事務所にはないし、そういえばどこにあるんだろう……まさかアラスカ? 自宅はすでに隈なく探していましたけど、普段めったに行かない地下に降りてみたら、なんか黒いボックスがあって、これは何だろうとよく見たら……。カメラのケースが入っていたんです。おそらく撮影から帰ってきて、ポンと置いたんでしょうね。まさかそんな所にあるとは、思いもしませんでした。

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 大竹さんもいらしたので、お見せしたら、すぐにカウンターのところをのぞいて、「これフィルム入ってますよ」って。6コマ撮られていました。

――本当に世紀の発見ですね。そこから先がまた、大変だったとか。

星野 すぐに、アラスカから近いアメリカ本土で現像できるところがないか探したのですが、これというところが見つからなくて、日本に持ち帰ることにしました。空港のセキュリティの人に説明をし、書類も提出して、X線を通さずに目視でチェックをしてもらったんです。

 フジフイルムのカメラだったこともあり、日本ではいつもお世話になっているフジフイルムに持っていきました。最低でも25年はたっているので、フィルムを巻き上げるときに切れてしまう可能性もある。責任は誰も取れないので、じゃあ誰がやるかとなって、結局私がやることになりました。

 あらかじめ同じ種類のカメラで、巻き方の練習をしましたが、途中で一回ひっかかってしまって。

――それはドキドキしますね。

星野 巻き方がちょっと特殊で、一回違うところを回さないと次に回らない、それを教えていただきながら、なんとか最後まで巻き上げることができました。

 現像できたとしても、像は映らない可能性が高いですと、言われてもいました。

 星野がパノラマカメラでわざわざ撮っていたものは、もともと限られていたので、マクニール川のクマなのか、紅葉したツンドラにあるカリブーの頭骨と角なのか、あるいはホッキョクグマの可能性もあるな……と、想像しながら待ちました。

――そして出てきたのが、ホッキョクグマでした。

星野 はい。まず像が映っていたことに、本当に安心しました。経年劣化でピンク色に退色はしていましたが。

 最初のほうは氷原で、その何コマ目カにクマが映っている。クマを撮ろうとはしてたのだけれど、ずっと通るのを待っていたのか、あるいは行ったり来たりしていたのを撮っていたのか、それは分からないんですけれど。

 いま、ホッキョクグマの写真が出てきたっていうことに、考えさせられるものがありました。先ほども話したように、極地の環境もこの30年で顕著に変化していますから。

 実物を写真展で展示したときは、みなさんとても真剣に見ていましたね。

発見されたパノラマカメラのフィルムには、氷原、ホッキョクグマなど6枚の写真が確認でき、NHKニュースでも取り上げられた。 写真提供・星野道夫事務所

――没後30年になるこの夏、様々な写真展・企画が進行中と伺っています。あらためて30年を迎えてのお気持ちと、今後作品を未来へ受け継いでいくと考えたとき、心に留めていらっしゃることがあれば、ぜひ教えてください。

星野 30年を振り返ってみて、こんなに長くみなさんに作品を見続けてもらえるとは、思っていませんでした。やはり星野の作品を愛して、大切に思って、伝えていこうとして下さっている方たちのおかげです。

 星野本人が、「自分の写真や文章で、誰か一人でも励ましたり勇気づけることができれば」と望んだように、星野道夫の作品が皆さまの心とともにありましたら、大変嬉しく思います。

――ありがとうございました。

INFORMATION

〈星野道夫事務所〉https://www.michio-hoshino.com/
展覧会・イベントなどの最新情報は、こちらでご確認ください。

≪開催中≫
〇特別展「写真展 星野道夫 悠久の時を旅する」(東大阪市民美術センター)
2026年7月17日(金)~8月30日(日)
https://hos-higashiosaka-art.com/exhibition/detail/hoshinomichio/

〇「星野道夫写真展 ~NANOOK(ナヌーク) ホッキョクグマ 氷原の静かなる物語」(富士フイルムフォトサロン 東京)
2026年7月24日(金)~8月13日(木)
https://fujifilmsquare.jp/exhibition/260724_01.html

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最初から記事を読む 【没後30年】なぜ写真家・星野道夫は、これほどまでに愛されるのか