大自然の中で自噴し、人の手が一切加わっていないありのままの温泉「野湯(のゆ)」。到達には深い藪漕ぎや沢歩きを強いられ、入念な情報収集と体力、精選された装備が試される。しかし、すべての困難を克服して湯に浸かった瞬間の達成感と、子供の頃に憧れた秘密基地を手に入れたような喜びは、他では決して味わえない。ここでは、源泉のごとく尽きない野湯の魅力にとり憑かれた男の、過酷でロマンあふれる入浴ルポを紹介する。今回は北海道に位置する「小湯沼」を訪れた。

筆者がこれまでに訪れた野湯

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クマの棲む山中にある“野湯”を目指して

 「小湯沼」は北海道ニセコ連山のほぼ真ん中に鎮座する、チセヌプリの中腹に位置している。ニセコ湯本温泉の傍らにあって、沼が沸騰している事で有名な「大湯沼」の上流1kmほどにひっそりと佇んでいるが、アクセスできる道はない。

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 非積雪期には深い藪漕ぎをしながらでないとたどりつけず、クマに出くわすリスクもある。さらにブヨが多く、湯船に浸かるために裸になれば、全身刺されまくる。何より、夏の沼は高温で入湯自体が困難だ。