今年2月に開催されたミラノ・コルティナ五輪では、三浦璃来氏と木原龍一氏による“りくりゅうペア”の活躍ぶりが多くの人を勇気づけた。その活躍の舞台裏を、コーチ、トレーナー、強化部長の証言で辿った野口美惠氏の記事「りくりゅう『奇跡の金』の軌跡」から一部紹介します。
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フリーの棄権を一度は決断したが…
綿密な計画通り、五輪シーズン前半は、すべてが順調だった。予想外のハプニングが起きたのは、五輪を目前にした25年12月の全日本選手権だった。三浦がショートの本番直前の6分間練習でつまずき、左肩を脱臼したのだ。三浦は泣きそうな顔で、リンクサイドにいた渡部文緒(トレーナー)のもとに滑ってきた。「脱臼した! 入れて!」と、力の抜けた左腕を突き出す。渡部はリンクの中に身体を乗り出し、瞬時に肩を嵌めた。
ショートの演技は無事に終えたものの、翌朝になっても三浦の肩の痛みは治まらず、フリーの棄権を決断した。予定外の怪我が起きたことで五輪期間の計画はいったん白紙になった。竹内洋輔(強化部長)、ブルーノ・マルコット(コーチ)、りくりゅうの4人は、団体戦への出場について話し合った。竹内が振り返る。
「彼らのプランは『団体戦に貢献したいが、璃来ちゃんの肩の状態もあるので、個人戦での金メダルのために、団体戦は無理せずにショートだけにしたい』という考えでした。2人は年末まで考えたいということで、回答を待ちました」
団体戦のペアはショートのみになるとの想定で、竹内は準備を進めた。だが、2人の回答は「団体戦でも、フリーに出る」。きっかけは、三浦がふと口にした、「全日本選手権でフリーを滑らなかったのに、団体戦でも滑らなかったら、個人戦までフリーを通す機会、ないじゃん」という一言だった。
