2025年2月28日、ホワイトハウスで、ウクライナのゼレンスキー大統領に対して、トランプ大統領は、「君が勝つことはない」「感謝しなくてはならない。君にはカードがない」「君は、第三次世界大戦につながる事態でギャンブルをしている」と声を荒げ、さらにヴァンス副大統領が、「君は一度でも『ありがとう』と言ったか?」と追い打ちをかけ、激しい口論となりました。
これは、ウクライナ戦争での「西洋の敗北」の責任を欧州とウクライナに押し付ける行為で、私は「西洋が分裂し始めた」と分析しました。
こうした「西洋の分裂」(=欧州に対する米国の侮蔑的な態度)は、基本的に今も続いていますが、米国は、少なくともウクライナ戦争に関しては、この時点からやや軌道修正を図っています。
ウクライナ支援へと方針転換したドイツと米国
2025年6月、ロシア領内の製油所に関する「標的情報」のウクライナへの提供をトランプ大統領がCIAに許可した、と、ニューヨーク・タイムズ紙が報じています。
現在、モスクワだけでなく、国境から2000キロも離れたシベリアの石油施設にまでウクライナが攻撃対象を広げているのは、米国の軍事情報のおかげです。ロシア軍がウクライナ戦争の前線で活用していたスペースX社の衛星通信サービス「スターリンク」も、現在は使用できなくなっています。製造業を失った米国は、ウクライナに「兵器」は提供できませんが、「軍事情報」は提供できるわけです。
特筆すべきは、この米国の方針転換が、ウクライナ戦争への関与に慎重だったドイツのショルツ政権に代わって、2025年5月に、メルツ政権が誕生した直後になされたことです。ウクライナ戦争で経済的にロシアと分断させられたドイツ――ドイツとロシアの離間を図ることこそが、欧州における米国の重要な戦略目標の一つです――は、冷静さを欠いたメルツ首相の主導で、米国に対する「消極的な服従」から、米国に対する「熱狂的な服従」と「ウクライナ戦争への積極的な参加」へと大きく舵を切ったのです。
※本記事の全文(約15000字)は、月刊「文藝春秋」8月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(エマニュエル・トッド「日本の米追従は自殺行為だ」)。 全文では、下記の内容をお読みいただけます。
・イランの「離陸(テイクオフ)」の世界史的意味
・戦争の継続そのものがウクライナ国家の存在理由に

