20日、自民党総裁選の投開票が実施され、安倍晋三首相が石破茂元幹事長を破って連続3選が決まった。獲得票は安倍首相が553票、石破氏が254票で、安倍首相の圧勝に終わったが、石破氏も目標を上回る票数を得て善戦した。
新たな総裁任期は2021年9月末までの3年間。来夏の参院選を乗り切って来年11月19日を迎えれば、総理在職期間が戦前の桂太郎の2886日に並んで憲政史上最長となる。ここでは、総裁選の争点の一つになった政治姿勢について安倍首相が語った言葉をあらためて振り返ってみたい。
安倍晋三 首相
「ゴルフに偏見をもっておられると思います。今、オリンピックの種目になってますから。ゴルフがダメでですね、テニスはいいのか、将棋はいいのか、ということなんだろうと思いますよ?」
TBS『NEWS23』 9月17日
安倍首相の口から珍言が飛び出した。森友・加計問題について、キャスターの星浩氏から加計孝太郎理事長とゴルフや会食を頻繁に重ねたことの是非を問われた安倍首相は、相手が利害関係者であっても以前からの友人だから問題ないという独特の持論を展開。しかし、星氏から学生時代からの友人であっても利害関係者とゴルフはしてはいけないと追及されると、上のように反論してみせた。ちょっと何を言っているのかわからない。
古くからの友人ならば相手が利害関係者であっても問題ないという安倍首相の言い分は正しいのだろうか? 「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」では「関係業者との接触に当たっては、供応接待を受けること、職務に関連して贈物や 便宜供与を受けること等であって国民の疑惑を招くような行為をしてはならない」と定められている。なお、法令ではないため罰則はない。石破氏は「自分が権限を持っているときはしません」「少なくともそういう権限を持っている間は接触はしない」と答えている。
安倍首相は「はっきりと申し上げたいのは、利害関係者から1円の献金も受けていないわけですから。加計さんからもそうですし、獣医師会からも1円も献金を受けていません」とも語ったが、かつて安倍首相は周囲に「加計さんは俺のビッグスポンサーなんだよ。学校経営者では一番の資産家だ」と語っていたことがある(『週刊文春』2017年4月27日号)。また、首相の側近の萩生田光一官房副長官が落選中、加計学園が経営する千葉科学大学で客員教授を務めていたことはよく知られている。
なんといっても総裁選中のテレビ出演という場で、現職の首相が相手の質問にまともに答えようとしていないということが大問題だ(まともに答えようとしてこれだったらもっと大問題だが)。
政府の国会答弁に「朝ごはん食べた?」「ご飯(白米)は食べていない(パンは食べた)」といった「ご飯論法」が潜んでいると指摘した法政大学の上西充子教授は「テニスはいいのか、将棋はいいのか」発言について、「安倍氏は都合が悪くなると論点をずらしたり、はぐらかしたりする傾向があるので、ご飯論法が出たら逆に政権の急所だと判別することができる」と指摘している(毎日新聞web版 9月18日)。
安倍晋三 首相
「この問題も含めて、昨年総選挙を行い、この問題で行ったわけではないが、このことの議論をいただいた。その意味で、国民の審判を仰いだ」
朝日新聞デジタル 9月14日
14日に日本記者クラブで行われた公開討論会でも、森友・加計学園問題に関する質問が相次いだが、安倍首相は「慎重に謙虚に丁寧に政権運営にあたりたい」「文書の改ざんは二度とあってはならない」などと紋切り型の回答に終始した。その中で昨年の衆院選で大勝したことにふれ、「その意味で、国民の審判を仰いだ」と語ったが、ここでも論点のすり替えが行われている。
昨年の衆院選は「国難突破選挙」と銘打って少子高齢化への対応と北朝鮮情勢への対応を掲げて勝利した。この選挙で森友・加計問題が収束したわけではない。政権に近いとされている読売新聞が今年7月に行った世論調査によると、森友・加計問題について安倍首相のこれまでの説明に「納得している」と答えた人は17%だったのに対し、「納得していない」と答えた人は77%にのぼった。とても「国民の審判を仰いだ」とは言えない数字だ。