戦後史に残る凶悪事件の「由美子ちゃん事件」。1955年、まだ米軍の統治下だった時期の沖縄で米兵がわずか5歳と数カ月(当時の報道では数え年で6歳と紹介)の女児を誘拐した末、性的暴行を加え殺害した事件だ。発見された遺体には、下腹部から肛門まで切り裂かれたような、目を背けてしまうような傷が残っていたという。
犯人である31歳の米兵、アイザック・ジャクソン・ハートは、事件の前からその強い異常性を周辺に見せていたという。当時の新聞記事や文献を基に、裁判のようすなどをまとめていく。なお、以下本文中の表現は当時の記事や文献に準じている。
海辺で女性を全裸にして首を絞め……徐々に明らかになった「犯人の異常性」
事件後、1955年9月13日付琉球新報夕刊では「変態米兵へ呪いの声」と題した囲み記事にて事件の一連のおさらいと共に「“鬼畜にも等しい悪らつ極まる行為だ”とのろいの声は高まり大人も子供も“犯人は死刑以上の刑に処して下さい”と訴えた」との県民の声を紹介していた。
冒頭でも述べたように、「まるで鋭利な刃物で下腹部から肛門にかけて切り裂いたようだった」という由美子ちゃんの亡骸。同8日付琉球新報朝刊では、司法解剖を担当した医師の話として「明らかに変質 長浜医師の話」との見出しで、以下のように掲載されている。
「年令的に見ても虐待症状からしても明らかに変態性の行為と見なされる。単に情欲を充たすだけならあんな虐待症状は見られない。下腹部に鬱血があるのは行為が以前に手荒なことをしている證拠である。虐待症状があるのは精神異状者でない限り、変態的性格によるものと推論出来る」
また、ハートと接点のある「女給」からも次々と証言が飛び出し、その異常性が強調されてきた。
同10日付沖縄タイムス夕刊では「酔うと女給の手首をねじまげたり、腿をつねったりするクセがあった」というサディスティックな面が明かされ、事件前月の8月25日の夜には、別の女性を連れて近くのビーチに遊びに出たものの、突然彼女を全裸にして首を締めたので、慌てて裸のまま逃げ帰ったという事実も明るみに出た。



