税務調査がきっかけで驚愕の実態が明らかになることがある。関空国際空港の建設工事では、38億円の脱税事件で水谷建設が摘発されたさい、10億円が暴力団幹部に渡っていたことが発覚した。
この事件を取材した朝日新聞記者・市田隆氏によると、暴力団の不当な要求に、建設会社が独自に解決を図る「サバキ」が今も続いているという。関係者の証言をもとに市田氏が詳報する。
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関空工事のサバキで10億円
暴力団など裏社会に流れるカネは、対象工事が大規模になるほど巨額になる傾向がある。通常であれば露見することのない水面下の動きが、私の取材した大型脱税事件の捜査で明るみに出た事例がある。関西地方における「サバキ」で、暴力団に裏金が支払われる実態を、私が知ったのはこれが最初だった。
大阪湾泉州沖にある海上空港の関西国際空港。1987年から約20年間にわたり建設工事が行われ、海上を埋め立てた一期島、二期島の広さは計約1055ヘクタールに及ぶ。総事業費は約2兆9800億円に上った。暴力団側への裏金は、この建設工事に絡むものだった。
2006年に東京地検特捜部と東京国税局査察部が連携して摘発した中堅ゼネコン「水谷建設」(三重県桑名市)の脱税事件では、2003年と2004年の2年間で計約38億円の所得隠しが認定された。そのうち10億円が関空の二期工事の際に裏金として使われていたことが捜査で明らかになった。
工事参入を図った水谷建設は、元請けのゼネコン1社から下請けに入る条件として、地元対策の「サバキ」で暴力団幹部らに10億円を渡すよう指示された。脱税マネーを原資にして、支出された10億円の一部は、暴力団組織の上層部に対する上納金に充てられていたのだ。
この裏金支出に関わった関係者の1人はこう明かした。
「水谷建設が積極的に裏金を出した訳ではない。関西で大型工事に参入するためには、介入してくるヤクザの要求に応じざるを得ないと考えていたようだ」
この取材をしていた2006年当時、私が関西地方の暴力団側への裏金の流れをキャッチした事件は、関空工事に絡む建設業界だけにとどまらない。
同年5月には、地方自治体が発注する汚泥・し尿処理施設工事の入札をめぐる談合事件で、公正取引委員会が大手プラントメーカーなど11社を独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで検察当局に刑事告発した。この事件で調査担当の中心的な存在だった公取委関係者が、事件の背景事情を私に明かした。
