首都圏はロシアン・ルーレットの上にある
首都圏を襲う直下型地震で2番目に懸念される地震は、地上に確認された「活断層」が動くものである(図1-1の(1))。東京都府中市から埼玉県飯能市にかけて長さ33キロメートルの「立川断層帯」がある(図1-2)。ここで予想される地震の規模はM7.4で、今後30年以内に立川断層帯で地震が発生する確率は0.5~2%と予測されている。これは一生のうちに台風(0.5%)や火災(2%)で被害を受ける確率と近い。
また、立川断層帯は1万年から1万5000年の周期で動いてきたが、最後に動いた時期は2万年前から1万3000年前である。つまり立川断層帯は最後に大地震を起こしてから1サイクルの周期が過ぎているように推測される。銀行預金に例えれば、「満期」に近い状態で、いつでも起こりうる状態にある。時期の予測は地質学者が懸命に調べても、こうした誤差を含んだ状態でしか分からないものなのだ。
実は12年前の東日本大震災以来、内陸にある活断層の活動度が高まっている。というのは、東日本大震災を起こしたM9.0の巨大地震によって、日本列島全体の地盤が東西方向へ引っ張られるようになったからだ。つまり、以前とは異なる余分な力が地面にかかるようになったため、首都圏の活断層も5倍ほど動きやすくなったのである。
首都圏では活動が高まった活断層は他にもある。神奈川県横須賀市にある「三浦半島断層群」(図1-2)はM7.0の地震が予測され、30年以内の地震発生確率が6~11%になった。ガンによる死亡(6.8%)や交通事故で負傷(24%)する確率と比べると、おおよその見当がつくだろう。
ちなみに、三浦半島断層群の中にある武山断層帯は、1600年~1900年の周期で動いてきたが、最後に動いた時期は2300年前~1900年前である。すなわち、立川断層帯と同様に、こちらも「満期」の状態とみなしても差しつかえない。
このタイプの直下型地震に関する大事なポイントは、活断層が動く日時を前もって予知することは現在の地震学では科学的に有効な手法がないということである。言わば「ロシアン・ルーレット」の状況にあり、いつ起きても不思議はないと覚悟して首都圏に住まなければならない。
※本記事の全文(約12000字)は、月刊文藝春秋の電子版「文藝春秋PLUS」に掲載されています(鎌田浩毅「首都直下地震とタワマン」)。 全文では、下記の内容をお読みいただけます。
・200メートルの炎の渦「火災旋風」が住宅街を襲う
・高層ビルとタワマンの倒壊リスク

