ノンフィクション作家として一番幸せな瞬間

――ノンフィクション作家として、この瞬間がこの仕事の醍醐味だな、と思うときはありますか? 

堀川 取材相手にインタビューをしに向かうときの道中が一番幸せです。

――それは意外ですね。なぜでしょうか。

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堀川 インタビューをする人が見つかったっていうことだけでも凄いことだと思うのです。書きたいテーマができて、取材相手を探し当てて、その人に直に会える関係ができて……たとえ話の中で拒絶されたとしても、取材に行くときっていうのは、これから物語が動き出すかもしれないという希望がある。

――約束を取り付けるまでが大変ということですね? 

堀川 そうです。長いやりとりを経て、直に会うことができるようになった段階で、この仕事の九割は終わったようなものだと思います。だから、取材に向かう道中は、楽しみっていうか、あぁこの仕事していて良かったなっていう思いで胸がいっぱいになります。

堀川惠子さん。 写真:杉山秀樹

――どんなに相手が怖い人だとしても?

堀川 はい。怖ければ怖いほど、難解な人ほど自分の中でやる気が出ます。相手が自分の人生で一番辛い話を語ってくれるというのは心を許してくれたということであり、私という人間を信じてくれたということでしょう? この人にさらけ出しても、ちゃんと伝えてくれるっていうものすごい信頼感を私に抱いてくれた証なので、絶対に裏切れないと思います。家族にも話せないことなんだけど、家族に話せないからこそ第三者に語れる、そういうケースも多いですね。取材者としてまずその場所に行ける資格を得たと思うと、もう、取材に行きながら、いつもうきうきわくわくしている(笑)。……で、何も話してくれなくて帰りはがっかり疲れて引き上げていくことも沢山ある!

――それはしんどいですね。

堀川 人の話を聞くっていうのは体力を使います。どんな相手でも、こちらは身体中、全神経を集中して耳を傾けますから。取材を終えて帰る時は、だいたい腰がたたなくなってますね。成果がなくてガッカリして、道端に座りこんで動けなくなることもよくあります。取材というのは、まぎれもなく肉体労働ですね。

(4回目に続く)

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次の記事に続く 「紙の本の力は本当に捨てたもんじゃない」――現在進行形で解明が進む遺骨の物語