「通知が出ているから大丈夫、ではないのです。横浜のように具体的に運用を整えている自治体もあれば、そうでない自治体もある。患者さんの最期が、住んでいる自治体の運用次第で変わってしまうのはおかしい」
「要介護度」が軽く出やすい理由
【問題点2】
「歩けるか」で軽く見られ、必要な福祉用具に届かない
介護保険の認定は、その人の介護にどれくらい手間がかかるかを評価する。佐々木医師によれば、この仕組みは高齢者施設で暮らす認知症高齢者のケアにどれくらい時間がかかっているかを土台につくられてきた。そのため、認知機能が保たれ、何とかトイレまで歩けるがん患者は、実際には生活上の依存度が高くても、要介護度が軽く出やすいという。
「『トイレまで歩けるんですね』となると、要介護2程度にとどまり、介護ベッドやエアマット、車いすなど、本当は必要な福祉用具に届かないことがあります。今日歩けている人が、明日寝込んでしまうことがあるのが、がんの特徴です。そういう変化を見越したケアプランを立てないといけません」
【問題点3】
年齢で線を引くため、40歳未満は対象外になる
もう一つの課題は年齢だ。介護保険を利用できるのは原則65歳以上で、40〜64歳は末期がんなどの特定疾病に限られる。つまり、同じように重い介護が必要でも、40歳未満のがん患者は介護保険の対象外となる。
佐々木医師は「39歳11カ月と40歳1カ月で、必要なケアが違うわけではありません。本当は40歳未満のがん患者にも、特例で使える仕組みが必要ではないか」と話す。
「運用で頑張るのではなく、制度そのものを変えるべきだ」
佐々木医師が求めているのは、自治体ごとの善意や工夫に頼る運用ではなく、制度そのものの改正だ。
主治医が「急速な悪化が見込まれる」「抗がん剤治療中で生活機能が大きく低下している」と判断した場合、認定結果を待たず、全国どこでも一定期間は要介護3や4相当のサービスを使えるようにする。後から認定結果が軽く出た場合でも、患者や家族、介護事業所が差額負担の不安を抱えなくてすむよう、公費で支える仕組みにする。これが佐々木医師の提案だ。