北海道日本ハムファイターズの監督をつとめる新庄剛志氏は、今年で監督5年目。悲願のパ・リーグ優勝を懸けて今年もラストスパートをかけている。ガラポンでスターティングメンバーを決めるなど“破天荒な策”で知られる新庄氏の素顔とは——。ノンフィクション作家の鈴木忠平氏が、一軍バッティングコーチ・山田勝彦氏に訊いた。
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一番悔しがっているのは監督
2026年が明けて間もなく、山田は新年の挨拶を兼ねて東京にある新庄邸を訪ねた。
「山田さん、今年はリラックスしていきましょう。結果はもう決まっているんですから」
前年は最後まで優勝争いをした末に2位に終わり、プレーオフではあと一歩のところで日本シリーズ進出を逃した。内心、優勝へ血眼になっているだろうと推測していた山田はいくらか肩透かしにあった気分だった。
だが部屋を見渡すと、リラックスとは程遠い光景が広がっていた。2台あるテレビにはどちらも野球の試合が映し出されていた。そのうち一つは、まだ大谷翔平がファイターズのユニフォームを着てマウンドに立っていた頃のものだった。録画なのだから早送りもできる。それでも新庄は一つのシーンも飛ばすことなく、解説者の一言一句に至るまで聞いていた。画面を凝視しながら時折、当時の監督だった栗山英樹の作戦傾向などについて呟いていた。まだ正月明けて間もないというのに、新庄はもう勝負の中へと没入していた。
〈自分も好きで野球をやってますけど、やっぱり映像を見たり、データを分析したり、仕事としてのしんどさはあるんです。でも監督は苦になっていない。本当に好きなんです。だからこそ負けたら一番悔しがっているのは監督です。めちゃくちゃ怖いですよ。試合後、連絡がつかなくなることもありますから〉
選手たちが監督である新庄をどう思っているのか、山田には察しがつく。世の中がどんなイメージを持って見ているのかも想像できる。突然、舞い降りてきた改革者、華やかな魔法をかけてくれるエンターテイナー、あるいはZ世代の理想の上司と言われているかもしれない。だが、山田は新庄の素顔を知っている。彼の熱源とその温度を知っている。だから監督とコーチという間柄で仕事を始めて以来、ボスの言うことには、たとえそれがどんなに破天荒な策であれ、まず頷くことにしてきた。
