〈たしかに、野球の常識からは外れているよなと思うこともあります。でも直感でやっているわけではないのを分かっていますから。あれだけの姿を見ていたら、監督の言うことにはまず、ハイです〉
ガラポンでスターティングメンバーを決めると言った時も、今日はチームスタッフに指揮を任せると言い出した時も、山田はざわめく心を落ち着かせて頷いてきた。ただ、そんな山田が今年ばかりは禁を破るかもしれない。
〈今年に限っては、ここだけはという場面では言わせてもらうかもしれません。本当に勝負なので〉
「優勝したら、ボス、どこかいっちゃうのかな」
数年前まで何者でもなかった選手たちは今、球界を席巻する個性派集団になった。昨シーズンはリーグ王者ソフトバンクと互角に戦った。最新のスタジアムに詰めかける観衆は、彼らの劇的な変貌の物語に沸いている。驚きと賛否の渦中で新庄が監督になった時、就任から2年続けて最下位となった時、一体誰がこうなることを想像できただろうか。
だが、どれだけ心揺さぶるプロセスがあろうと、歴史に刻まれるのは勝者だけである。だからこそ勝ちたい。勝たせたい。新庄を取り巻く人々の間にはいつしか、そんな熱気が横溢するようになった。ひとつの体制が5年目を迎え、機が熟したという自信も漂っている。ただ不思議なのは、始まりと同時に終わりの予感も内包していることだ。
〈優勝したいです。今年は勝たなければならないとも思っています。でも、もし優勝したら、ボス、どこかいっちゃうのかな。なんか、そんな気がするんです〉
※約9000字の全文では、捕手・郡司裕也氏と内野手・清宮幸太郎氏が「新庄剛志監督の言葉」を振り返っています。全文は、月刊文藝春秋のウェブメディア『文藝春秋PLUS』に掲載されています(鈴木忠平「ボス新庄監督の魔法」)。
出典元
【文藝春秋 目次】東京極秘対談 ティール×トッド 世界は終末を迎えているのか/池上彰×佐藤優 “暴れ獅子”トランプと“女豹”高市の生きるか死ぬか/官邸官僚の第二の人生
2026年5月号
2026年4月10日 発売
1300円(税込)

