戦後まもない1946年、住友財閥当主の12歳の長女が下校途中に誘拐された。身代金目的と思われたが、捜査線に浮上したのは半年前にも良家のご令嬢を連れ去っていた22歳の男。
逮捕された男が供述したのは「少女にしか情熱を燃やせない」というあまりに歪んだ欲望。さらに押収した手帳から男の歪んだ欲望を示す「5文字の言葉」が明らかに。
なぜ名門の令嬢ばかりを狙ったのか? 鉄人社の文庫新刊『戦後まもない日本で起きた30の怖い事件』より一部を抜粋・再編集してお届けする。(全2回の1回目/続きを読む)
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誘拐された12歳少女
終戦から1年1ヶ月が経過した1946年(昭和21年)9月17日午前11時半ごろ、横浜市戸塚区東俣野町に住む住友財閥16代当主、住友吉左衛門家の長女で、白百合高女付属初等科6年の邦子さん(当時12歳)が、校門を出て級友と小田急線片瀬江ノ島駅に向かう下校途中に何者かに誘拐された。
目撃証言によれば、このときカーキ色のシャツに軍服略帽を被った30歳ぐらいの男が、1人で歩いていた学友に「住友さんの娘はどなたですか」と尋ね「前を行く3人連れの1人です」と答えると、邦子さんに近づき「警察の者ですが、お宅で重大な事件が起きましたから一緒に来てください」と言い彼女を連れ去ったという。
通報を受けた警察は鎌倉署に捜査本部を設置。犯人からの要求を待つと同時に聞き込みを行い、事件の1週間ほど前から、30歳ぐらいのカーキ色のシャツと乗馬ズボンを着て、軍靴に赤い脚絆を巻いた同一人物と思われる男が「住友さんの娘さんはどなたですか」と別の学友数人に聞き回っていたことを突き止める。
このことから、住友家令嬢を狙った金目当ての計画的犯行の疑いが強まるが、脅迫状及び身代金要求の電話などが来る気配は一切なかった。
犯人の目的がわからぬまま、警察が過去の誘拐事件を調べていたところ、邦子さん連れ去りの半年前の1946年3月14日、東京・目白警察署付近で、級友2人と下校中だった日本女子大付属豊明小学校6年生で、日本帝国工業の清水厚専務の次女(同13歳)が、戦闘帽、白マスク、ネズミ色の外套を着用した20歳過ぎの男から「ちょっと聞きたいことがあるので、近道をして帰ろう」と言われ、そのまま連れ去られていたことが判明。
