SNSの「闇バイト」で集めた実行役を操り、日本中を震撼させた広域強盗「ルフィグループ」。彼らは単なる凶悪犯の集団ではなく、最盛期には月2億5000万円を稼ぎ出す“極めて合理的なビジネス組織”だった。なぜ1人の女性が「伝説のかけ子」として累計6億円もの大金を搾取できたのか?
『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』(講談社)を上梓したノンフィクションライター・栗田シメイ氏の証言から、法廷の裁判長すら感嘆させた恐るべき「才能」と、異形の犯罪グループの知られざる裏側が浮かび上がる。(全2回の1回目/続きを読む)
(初出:「文藝春秋PLUS」2026年7月8日配信)
日本中を震撼させた広域強盗「ルフィグループ」。彼らが手を染めていた特殊詐欺の「かけ子」といえば、薄暗い部屋でマニュアル通りの台本を読み上げる無個性な存在――多くの人がそう想像するだろう。しかし現実は全く異なる。なぜ、1人の女性が累計6億円もの金額を詐取できたのか。
文藝春秋PLUSのYouTube番組にノンフィクションライターの栗田シメイ氏が出演し、自著の取材過程で得た証言を語った。そこで浮かび上がったのは、「ルフィグループ」の「合理的な人材活用」という、意外な実態だった。
「高齢者男性の引きがかなり良かった」
組織内で「伝説のかけ子」と呼ばれた山田李沙受刑者は、フィリピンから日本の高齢者に電話をかける実働部隊の一員だった。栗田氏は彼女について、「累計6億円を1人で搾取したと自称しているかけ子」だと説明する。グループ全体の被害総額が約60億円とされる中、実に10分の1を1人で叩き出した計算になる。
なぜ彼女はそれほど突出した数字を残せたのか。幹部である小島智信受刑者(撮影時は被告)の証言によれば、「女性というだけで、高齢者の男性に対する電話の引きがかなり良かった」というのが実態であり、「月1000万ぐらいは、普通にやっていたら搾取できた」という。
組織のかけ子の7~8割が男性であった中、女性というだけで高齢男性への「突破力」が格段に上がる。そのことを組織は冷静に数字として把握し、人材配置に活かしていたのだ。「ルフィ」グループの主力であるA箱と呼ばれるグループの月間詐取額はピーク時で2億5000万円に達したと栗田氏は述べる。感情を排した徹底したビジネス思考が、この組織の最大の特徴だった。
