特殊詐欺や強盗などで日本を震撼させた、通称「ルフィ事件」。グループの中には女性も多く存在した。彼女らはホスト遊びの借金などを返済するため、「50万円」という安値で売り飛ばされて特殊詐欺に加担させられていたという。

 中でも話題となったのは、名家に生まれミスコンにも出場した経験を持つ、熊井ひとみだ。ここでは、ノンフィクションライター・栗田シメイ氏の著書『檻の中のルフィ 闇バイトを生んだ者たち』(講談社)から、一部を抜粋。グループで“伝説の女かけ子”と称された山田李沙の証言などを基に、熊井の素顔を明かす。なお文中の被告表記は略している。

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多くの女性が「50万円」で詐欺グループに売られていた

 女性が末端のかけ子としてフィリピンに渡航する理由は様々あるが、多くは自己責任という言葉で片付けられる。その最たる例が、「ホスト遊びにハマってツケが払えなくなった」というものだ。リクルーターだった小島は、女性のかけ子が組織に加入する背景をこう説明した。

「一番多いのは、売り掛けを回収できなくなったホストがスカウトに泣きつき、スカウトが私たちに客の女を売るパターンでした。私たちは女を買い取る代わりに、50万円をスカウトに支払います。

 なぜ50万円かというと、1000万円の案件に対してのかけ子の報酬が50万円だからです。こっちに来るのは風俗でもまともに働けないような子が多い。まったく案件を取れないかけ子も少なくないのです。総合的に考えて、50万円が妥当という判断でした」

 1人の人間の価値が50万円とはあまりにも安い。だが、少なくとも幹部はその価格を「妥当」と認識していた。かけ子たちの裁判では「詐欺とわからずにバイト感覚で参加」という証言も出ているが、カネを稼ぐため、詐欺と自覚しながら加入した事例もあっただろう。山田が所属したA箱でも、同じような理由でフィリピンに渡航してきた女性たちがいた。

「エドガワ」と呼ばれ、後にグループから飛んだ細野優花。リストカットを繰り返していた「フジタ」。

 そして、「イイジマ」と名乗っていた熊井ひとみである。