〈あらすじ〉

 1945年4月、ドイツ北部アムルム島。12歳のナニング(ジャスパー・ビラーベック)は、臨月の母ヒレ(ローラ・トンケ)、幼い弟妹、叔母エナ(リーザ・ハークマイスター)とともに、空襲を避けるため大都市ハンブルクからこの島へとやってきた。父は戦争捕虜となって不在。代わりに一家を支えるべく、ナニングは農場主テッサ(ダイアン・クルーガー)のもとで働いていた。

 しかし終戦の気配を感じて口をすべらしたテッサの発言が、狂信的なナチスの信奉者であるヒレの耳に入ったことから歯車が狂っていく。やがてヒトラーの死を知ったヒレはショックで破水。生気を失い、食事も拒むように。唯一、大好物のはちみつとバターをたっぷり塗った「白パン」なら食べたいという。ナニングは、母の願いを叶えようとパン屋や養蜂家、隣の島にまで出向いていくが……。

〈見どころ〉

 全米撮影監督協会賞にもノミネートされた映像美、アムルム島の海景。本作で俳優デビューした12歳の新星ジャスパー・ビラーベックの存在感。

©2025 Bombero International Gmbh & Co. Kg 配給:ビターズ・エンド

戦争が終わり、世界が変わる─少年の目を通して描かれる一週間
ドイツの鬼才ファティ・アキン監督の最新作。恩師でありドイツ映画界の重鎮ハーク・ボームの幼少期の記憶を映画化。カンヌ国際映画祭カンヌ・プレミア部門正式出品、またドイツで最も影響力のあるバイエルン映画賞で最優秀作品賞を受賞している。

  • 芝山幹郎(翻訳家)

    ★★★★☆北海に浮かぶアムルム島の撮り方が素晴らしい。舞台や背景というより、映画の主人公とミクロコスモスを兼ねる役割を果たしている。まるで一個の人体だ。風景がその肌で、登場人物がその器官。潮の干満も有機的な脈動だ。

  • 斎藤綾子(作家)

    ★★★☆☆奔走する少年ナニングの必死さは滑稽に見えるが、どの家庭にも家族の想いに懸命な者と己の今しかない者がいることを連想する。海や干潟の光景は、自然に命を奪われる怖さも忘れる美しさで戦禍とは思えぬ舞台にぴったり。

  • 森直人(映画評論家)

    ★★★★☆アキン監督の卓越した手腕が、戦争の時代に晒される無垢を少年の揺らぎとして結晶させる。題材は『ジョジョ・ラビット』と響き合うが、崩れゆくナチスドイツの空気の中で成長の痛みが静かに輪郭を得ていく。撮影も端正。

  • 洞口依子(女優)

    ★★★☆☆ナチス政権末期のドイツ北の海岸線を行ったり来たりする少年の姿を見つめているだけで映画的な美しさを感じるも、内容的には『ジョジョ・ラビット』純朴版。それでもこの時期のアンバランスな人間の心理を丁寧に描写する志に星。

  • ゲスト評者
    片岡一郎(活動写真弁士)

    ★★★☆☆戦地から遠く離れた土地にあった、もうひとつの戦争の存在を見る者に納得させる少年の瞳の演技が秀逸。歴史ものとしての価値も高い。一方で、どこまでも美しいアムルム島の自然を通じた暗喩表現はいささか過多に感じられた。

    かたおかいちろう/1977年生まれ。2002年に澤登翠に入門、同年デビュー。日本を代表する活動写真弁士として国内のみならず国際的に活動中。映画『カツベン!』の実演指導や『ゆきてかへらぬ』などに弁士役で出演も。著書に『活動写真弁史 映画に魂を吹き込む人びと』がある。

  • 最高!今すぐ劇場へ!★★★★★
  • おすすめできます♪★★★★☆
  • 見て損はない。★★★☆☆
  • 私にはハマりませんでした。★★☆☆☆
  • うーん……。★☆☆☆☆
農場主テッサを演じるのは、ファティ・アキン監督の『女は二度決断する』(2017)で第70回カンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞し、国際的に活躍しているダイアン・クルーガー。
©2025 Bombero International Gmbh & Co. Kg 配給:ビターズ・エンド
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『白パンと独裁者』
8月7日(金)~
監督:ファティ・アキン(『女は二度決断する』)
脚本:ハーク・ボーム、ファティ・アキン
2025年/ドイツ/原題:AMRUM/93分
https://www.bitters.co.jp/shiropan/