太平洋戦争末期、日本軍の捕虜監視員としてボルネオへ送られた台湾人の三兄弟。終戦後、その一人が捕虜虐殺事件の容疑者として法廷に立たされる――。「波の音色」は、台湾エミー賞こと「金鐘奨」のミニシリーズ部門で作品賞・監督賞・脚本賞などに輝いた傑作戦争ドラマ。監督のスン・ジエハン(孫介珩)と、日本軍司令官を演じた塚原大助に、史実をサスペンスに昇華した創作や、役作りと撮影の裏側を聞いた。

「波の音色」

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 1945年、終戦後の北ボルネオで戦犯法廷が開かれた。大量の死体が発見された元収容所で、元捕虜が監視員の罪を告発する。虐殺の実行犯として指をさされたのは、台湾人捕虜監視員の新海志遠(しんかい・しおん)。「すべて自分ひとりでやった」と罪を認めるが、オーストラリア軍の検察官ウィリアム・コールはその告白に疑問を抱く。

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 時を遡って太平洋戦争末期。新海輝(あきら)と志遠、木德(きとく)の三兄弟は、それぞれの願いを胸に秘め、日本統治下の台湾から日本軍の一員としてボルネオへ送られていた。物語は戦後の法廷と戦中の収容所を往復し、やがて虐殺事件の当日へ近づいてゆく。恐ろしい凶行の真相とは何か。そのとき、彼らにいったい何が起きたのか?

塚原大助(左)とスン・ジエハン監督

あらゆる想像を超える「戦争」のドラマ

「この題材は掘り起こされるべきだ」。監督のスン・ジエハンは、企画の初期段階から脚本家のツァイ・ユーフェン(蔡雨氛)とともに多数の資料を読み込み、熱意をもって本作に取り組んできた。連合軍の裁判文書、台湾人日本兵の口述、弁護士の回想録などに刻み込まれた史実を再現し、ひとつのフィクションとして織り直したのだ。

スン・ジエハン監督(以下、監督) 劇中の人物や事件は、歴史上の事実に基づいています。現実にあった出来事は、あらゆる脚本家の想像をはるかに超えうるものでした。それが「戦争」だったのです。

「波の音色」

 日本軍の一員となった台湾人三兄弟を通して、台湾人の視点で第二次世界大戦を扱うこと。台湾人日本兵をめぐる、加害と被害の捉えがたい真実を描き、凄惨な悲劇のなかにある「善良さ」を見つめること――。日本軍司令官・田中徹役の塚原大助も、脚本を読み、「この物語の中に存在していたい」と熱望したひとりだ。

 劇団「ゴツプロ!」を主宰する塚原は、2018年から台湾公演を積極的に実施。もっとも本作に参加する以前、日本と台湾の歴史については、「日本統治時代があったことくらいしか知らなかった」といい、劇中の出来事に驚かされたと語る。