監督 田中は日本という国家を代表し、最後の最後まで、連合軍の裁判官へ必死で弁明しなければならなかったのです。塚原さんは長回しのあと、しばらく涙を流していました。「当時の人々はこんなにもつらく、苦しい思いをしていたんだ。国家や民族のため、目に見えないもののために、ここまでしなければいけなかったなんて」と。
国籍や言語、世代を超えた密なコラボレーションが、作品に稀有な厚みをもたらした。塚原は「あのとき全員の間に、『僕たちは今、ものすごい作品に関わっているんだ』という情熱とモチベーションがあったように思います」と振り返る。
「田中役にふさわしい」監督の直感
田中役のオーディションは2023年初頭に新宿で行われた。約1年にわたって田中役を探していたスン監督は、日本の映画・ドラマ界だけでなく演劇界にも対象を広げ、ついに塚原と出会ったのだ。
監督 私たちが候補者を十数人ほど見たあと、すっかり疲れ果てていた夕方に、塚原さんは最後の候補者として現れました。彼がコートを着ている姿に、外套を着た軍人のような威厳を感じましたし、演技も本当に素晴らしかった。田中役にふさわしいと確信しました。
当時、塚原はスケジュールの都合でこの作品に出演できない可能性があった。しかしオーディションのあと、塚原はスケジュールを調整し、本作への参加を決意したという。
監督 食事をしながら、「あれほど良い役者に出てもらえないなんて」と話していたら、電話がかかってきて、「塚原さんが参加したいと言っている、なんとか台湾に行けるようにする」と。その場の空気が一瞬で変わったことをよく覚えています。




