青木冨貴子さんと三浦英之さんは、ともに太平洋戦争、そして戦後をテーマに作品を発表している。青木さんは2005年の『731』で、満州で人体実験を繰り返した731部隊の石井四郎の実像に迫り、その後もGHQ占領下の実態を追った。三浦さんは、その10年後の2015年、『五色の虹』で満州建国大学のスーパーエリートたちの戦後を描くなど、あの戦争を大きな主題としている。戦争経験者が減り続けるなか、ノンフィクションはあの戦争をどう書くのか。

青木氏はNY、三浦氏は仙台在住 ©︎文藝春秋

出会いと運だけでは説明できない「直筆日記」の発見

三浦 青木さんの『731』が出版された時の衝撃は忘れられません。あの頃、僕は東京社会部に所属していて、ちょうど『五色の虹』を書くために満州に関する資料を読み漁っている時期でした。それだけに、あの731部隊の石井四郎の日記を発見した、という帯を書店で見て、「嘘だろ……?」と。そんなとてつもない資料がまだ眠っているなんて、にわかに信じられなかったですから。でも、青木さんの著者名を見て、「ああ、この人ならやりかねないな」と思ったのを今も覚えています。

青木 私も、石井四郎の日記があるなんて、思いも寄らなかったですよ。とにかく取材を重ねた……と言えばそれまでなんですが、石井四郎に関係がありそうな人を帰国するたびに訪ね歩いて、石井の身辺の世話をしていた方を見つけ、その人の長男から、石井直筆の日記が2冊あることを教えられた。本当に運が良かった。

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三浦 ただ、青木さんは、チャップマンとの邂逅もそうですが、『731』の後には「パケナム日記」という一級の戦後史の資料も発掘していらっしゃいます(2011年に『昭和天皇とワシントンを結んだ男―「パケナム日記」が語る日本占領』として刊行)。ノンフィクションには出会いと運も大事ですけれど、ちょっとそれだけでは説明できません。