新しい時代のジャーナリズムこそ求められる「古典的な手法」
青木 資料を分析させるとか、翻訳させるとか、そういう面に関して、AIは有効だと思います。ただ私たちはAIにできない仕事をやる必要があります。つまり、AIを相手に、すでに世に出ているもの、発表されたもの、ネット上にあるものを対象に文章を書いていたら勝てないのは明らか。ならば、人間は足を動かすしかない。
三浦 その通りですね。AIが出てきたことで、ノンフィクションにおける身体性の重要性が浮き彫りになってきました。自分の身体を動かして、発掘した新事実によって作るのがノンフィクションであり、そこには誰も知らない驚きがあり、結果、文章が説得力を持つ。
青木 それが新しい時代のジャーナリズムであり、ノンフィクションなのかもしれません。でもそれは一方で、「現場に行く」という、すごく古典的な手法なのよね。原点に立ち返っているだけ、とも言える。
フィクションには持ちえないノンフィクションの力
三浦 さらに付け加えると、先程のピート・ハミルがいう「有名人病」にも繋がりますが、有名人はネット上にたくさん情報があります。おそらくAIに「〇〇の評伝を書いて」と指示すれば、ある程度のものができてしまう。一方で情報がまったくない無名の人々がたくさんいます。僕は彼らの人生の総体こそが時代だと思っているんです。それがやがて、歴史になる。
青木 三浦さんの『五色の虹』がそうですよね。建国大学に通ったスーパーエリートたちは、決して有名ではないけれど、彼らの肉声を集めることで、満州の一場面を描いています。とても面白く読みました。
三浦 そう言っていただけて、本当にうれしいです。僕らのような後進に、青木さんからアドバイスはありますか?
青木 私なんて、アドバイスをするような立場ではないですよ。ただひとつ、ピートがよく言っていたのは、「ジャンルを問わずたくさん本を読め」ということ。実際、彼の読書量は、古典から歴史、哲学、文学、SFからマンガに至るまで、もの凄いものでした。三浦さんには、釈迦に説法でしょうけど(笑)。次の作品も楽しみにしています。
三浦 ありがとうございます。ノンフィクションは社会を変える力があると思います。それはおそらく、フィクションには持ちえないことです。頑張って、そういう作品を世に送り出したいです。
青木 私もがんばらなくちゃ。それにしても、会いたい人に会えて、好きなことを聞いて、時に思わぬ現場に足を踏み入れて。こんな面白い仕事はないですよね。
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