1981年に報道写真家・沢田教一の生涯を描いた『ライカでグッドバイ』でデビューして以降、ニューヨークを拠点に、幅広いジャンルでノンフィクションを発表、昨年12月には『ジョン・レノン 運命をたどる』を刊行した青木冨貴子さん。一方、朝日新聞記者でルポライターの三浦英之さんは、『五色の虹』で満州建国大学の卒業生の戦後を描き、『太陽の子』ではアフリカにおける日本の高度経済成長期の闇に迫るなど、ノンフィクションの新たな旗手として、話題作を次々と世に問うている。

 今回は青木さんの帰国に合わせ、その作品群に「大きな影響を受けた」という三浦さんのたっての希望で、対談が実現した。フェイクニュースが跋扈し、戦後81年を迎えて太平洋戦争という「歴史」が忘れられ、「物語」になろうとしている現在、ノンフィクションにできることは何なのか――。

初対面の2人 ©︎文藝春秋

マーク・チャップマンと直接対峙し、40年以上かけた執念

三浦 今日はお会いできて、本当にうれしいです。まず、昨年末に出た青木さんの最新作、『ジョン・レノン 運命をたどる』には驚かされました。世界で最も有名なミュージシャンを殺害したマーク・チャップマンと直接対峙した、という圧倒的な取材力はもちろんですが、青木さんがチャップマンに手紙を送ってから、40年以上の長い期間をかけて作品に仕上げていった執念が凄まじい。

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『ジョン・レノン 運命をたどる』(講談社)

青木 初めて獄中のチャップマンに手紙を出したのが、1984年で、紆余曲折を重ねて、気付いたらこんなにも時間がかかってしまった。紛れもなく今までで、いちばん苦労した本です。

三浦 もう本当に一気読みでした。さらに言えば、青木さんの他の本でもそうですが、ご自身がこの作品を通じて歴史の一部になっている、と言ってもいいのではないでしょうか。作中でジョンと交流を持つ重要な登場人物として書かれているピート・ハミル(青木さんの夫で、アメリカを代表する作家・ジャーナリスト。映画『幸せの黄色いハンカチ』の原作者としても知られる。20年没)と長年、連れ添ったことも影響しているかもしれませんが。

青木 私自身が歴史、だなんてまったく思わないけれど(笑)、現代史の目撃者ではあるかもしれません。ニューヨークに住んでいることはもちろん影響しているでしょうし、ピートの存在も大きかったけれど、何より人に会うのが好きで、考えるよりも先に身体が動いてしまうんです、動きすぎるくらいに。