トランプが大統領になって様変わりしたアメリカ

青木 誰の目にも明らかですが、2017年にトランプが大統領になって以来、アメリカはすっかり様変わりしました。9・11も大きな節目でしたが、トランプがもたらした変化はそれ以上。かつての自由で多様なアメリカは、もうほとんど失われつつあります。「ニューヨーク・タイムズ」はじめ、アメリカンジャーナリズムにも、どこか大本営発表と言いたくなるような記事も出てくるようになってしまった。

三浦 僕は神奈川県相模原市の米軍基地の隣に実家があり、フェンスの向こうの星条旗を見て育ちました。子どもの頃には憧れ、思春期は反発し、大学に入ってからは、いっそアメリカ人になってやろうと思い、21歳の時にアメリカに渡ったんです。

青木 アメリカに住んでいた時期もあるのですね。それは知らなかった。

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三浦 はい。短い期間でしたが、LAにも住んだし、アラスカにも住みました。ニューヨークにいた時期もあって、日本人の駐在員に「ダウンタウンのごっつええ感じ」などのお笑い番組を3倍モードでダビングしたビデオテープを配って歩く、今思えばギリギリのアルバイトをしていました。だから、9・11の時はすでに日本で新聞記者になっていましたが、テレビ中継でかつて配達で通っていたツインタワーが崩れ落ちるシーンを見て、「ああ、戦争が始まるな」と思いました。それでも、あの頃はまだ、セントラルパークで多くの市民が「イマジン」を合唱したり、路上でプラカードを持って反戦を訴えたり、戦争へのカウンターの動きがありましたよね。今はそれがない。

ニューヨークに残されている希望

三浦英之 ©︎文藝春秋

青木 実はそういう動きはあるにはあるけれども、多くのメディアで報じられていないんです。ただ、こんな状況にあっても、ニューヨークでマムダニのような左派が市長になったことは、ニューヨーカーにとってある種の希望でもあるのです。

三浦 大きな流れに抗う人が、ちゃんといる。

青木 そうです。彼の先進的な試みがいつまで続くのかはわからないけれど、ああいう人物が出てくるニューヨークの面白いところは、まだ完全に消え去ってはいないのが救いですね。

次の記事に続く 「君がみ胸に 抱かれて聞くは~♪」李香蘭がふいに歌いだして…。隣で体感した“全細胞がザワザワッと泡立つような感覚”