――「普通さ」ですか。
髙橋 はい。戦前と聞くと、どうしても暗くて重いイメージを抱きがちです。しかしカラー化された写真の中には、笑顔で談笑する人々や、おしゃれを楽しむ若者の姿が鮮明に写し出されています。さすがに2020年代とは街の風景も服装も違いますが、「これが1950年代の写真です」と言われたら、今の若い人たちもすんなり納得するのではないでしょうか。
その「普通さ」があるからこそ、その後にやってくる悲惨な戦争との落差が際立ち、想像力をかきたてているのだと思います。「自分たちと同じような日常を生きていた人たちが、戦争に巻き込まれていったのだ」というリアリティが、世代を超えてフラットに届いている。
巻頭の「広島のカップル写真」が起こした奇跡
――読者からの反響で、特に印象に残っているエピソードはありますか?
髙橋 出版後に、信じられない出来事がありました。本書の巻頭と巻末には、象徴的な一枚として「広島のカップル写真」を掲載しています。戦後の広島の街に佇む、とてもモダンで素敵なカップルの姿を捉えた写真なのですが、なんとこの写真に写っているご本人・川上清さんが「これ、わしじゃないの」と名乗り出てくださったんです。
――ご本人が! それは驚きですね。
髙橋 本当にビックリしました。当時はご存命であることも存じ上げなかったので……。書籍を通じて、カラー化されたご自身の若き日の姿と再会されたというニュースは、私にとっても非常に思い出深い出来事です。カラー化には、ただ写真を美しく見せるだけでなく、こうして埋もれかけた「人と記憶」をつなぎ直す力があるのだと、改めて実感しました。




