「Yナンバーをとりたいんですけど」

 私は、開口一番切り出した。

「Yナンバーをとりたいんですけど」

 すると、受付のおじさんは笑いをこらえているように言った。

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「おにいさん、うちなーんちゅだよね」

「はい、Yナンバーをとりたくてきました」

 すると、おじさんはこらえきれなかったのか大笑いをして、独特の沖縄訛りで話し出した。

「アメリカ軍と無関係でここまで来たのはおにいさんが初めてだよ」

 どうやら仕事柄、プライベートで私のような者から「Yナンバー」の取得の方法を聞かれることがあるらしい。

「東京のほうで日本人がYナンバーの車に乗っているのを見たんですよ」

 私が言うと、おじさんは少し考え込んだような顔になった。

「それは、軍の関係者だと思うよ。一般人はまず無理だし、この仕事長いけど軍の関係者以外に書類を発行したことは一度もないよ」

 Mさんはかなりのイケメンである。もしかしたらアメリカの軍属の女性に彼女がいるのかもしれない。

 この時点で私はすべてを諦めた。

 そんな私のがっかりした顔に気が付いたのか、おじさんのほうが気を遣って仕事について話をしてくれた。

 VROとは「VEHICLE REGISTRATION OFFICE」の略である。簡単に言うとアメリカ版の陸運局であり、日本語では「四軍車両登録事務所」となる。

 ここは、SOFAを持っている者にのみ書類を発行するところである。

「先生、なんとかYナンバーを手にする方法はないですかね」

 基地を後にすると、私は脱力感でいっぱいだったが、ふと思いついたことがあり、足を地元議員の事務所に向けた。この議員は私の少年時代からの顔見知りである。

「先生、なんとかYナンバーを手にする方法はないですかね」

 すると議員は厳しい口調で言った。

「日本の憲法は、日本国籍を捨てて外国人になる自由があるから、君は外国人になるといいよ」

 私は自分が情けなくなり、返す言葉がなかったので黙っていた。

 そんな私を慮って議員はやさしく諭した。

「Yナンバーを含む日米地位協定には、たくさんの問題があるんだ」

 ちなみに彼は議員という職業柄、地域社会の問題点などを話し出すと止まらなくなる。彼は矢継ぎ早に続けた。