猟銃所持免許の取り消し処分に異議を唱えた裁判で逆転勝訴した北海道砂川市のハンター・池上治男氏(77)が、8月16日、押収されたライフルの廃棄について賠償を求め、国と北海道を提訴した。
この問題の発端は、とあるヒグマ駆除で池上氏が巻き込まれたもめ事だった。駆除を終えた1時間後、その日の現場をともにしたX氏が池上氏の自宅を訪ねてきたという。当時について池上氏に訊いた(文中敬称略)。
◆◆◆
疑惑の銃弾
「ヤツが言うには、さっきの駆除で、オレが撃った弾が跳弾(発射された弾丸が対象に当たったあと、弾かれて別の方向へ飛んでいく現象)して、Xの銃に当たったんだ、と。それで銃の修理代を要求してきた」
仮に羆を貫通した弾が、跳弾し、8mの斜面を越えて、Xの銃に当たったのが事実なら、駆除終了直後に全員で異常がないかを確認しあったときに言うべきだろう。それにしてもXは銃床を破損した銃で、クマの“止め刺し”をしたのだろうか。
池上はXの要求を拒否する。
するとXはそれから約2カ月後に、池上の跳弾によって自身の銃が破損したと警察に被害を申告。検察はXが主張する跳弾については立件しなかったが、北海道公安委員会が「周囲の安全確認が不十分で危険な発砲だった」と認定し、池上の猟銃所持許可を取り消す処分を下した。
そこからこの処分の取り消しと猟銃の返還を求める池上の闘いが始まったわけだが、すべての発端となったのがXの被害申告だったのである。
第一審は、Xの証言には不自然な点が多いとして、これを採用せず、公安委の処分は「裁量権の逸脱、乱用」として池上側が勝訴した。ところが第二審ではXの証言を採用し、池上の撃った弾丸が周辺の建物に当たる危険性があったなどとして池上側が逆転敗訴した。
池上はこう反論する。
「ライフルから発射された弾は、等速直線運動で一瞬にして獲物に命中するから、ピンポン球みたいに遅い速度であちこち飛び跳ねたりしない。物理法則を無視した話を裁判所が認めちゃったら、ハンターは誰も撃てなくなるよ」
これに対して最高裁はどう判断したのか。前提として押さえておかねばならないのは、日本の司法制度において、最高裁は法律の解釈や適用の是非を判断する「法律審」であり、事実を審議する「事実審」ではないということだ。
