明治8年創業の野村花火工業は、澄んだ青色の花火「野村ブルー」が世界的評価を受けている花火会社だ。花火競技大会では、日本の頂点である内閣総理大臣賞を歴代最多23回も受賞している。同社を率いる4代目社長・野村陽一氏(66)が、“秘伝の一発”に託した祈りとは——。

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日本の花火は輸出できない

 世界を見渡すと、花火をある程度以上の規模で作っている国は決して多くありません。日本や中国以外ではイタリア、スペインぐらい。その中でも、世界シェアの8割以上を中国が握っています。一説では国を挙げて100万人規模で花火産業に従事しているともいわれ、国外で売れる大量生産品として、膨大な数の花火を日夜作り続けています。

野村花火工業4代目社長・野村陽一氏 ©文藝春秋

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 日本はすばらしい花火を作り続けていますが、作り手はどこも規模の小さな地元の企業。かつてより大きくなったとはいえうちも15人の会社ですし、各地の花火会社もせいぜい10〜30人規模です。私のところにも、「高価でも日本の芸術的な花火を打ち上げたいのでぜひとも輸入したい」とアメリカのミズーリ州の花火組合から連絡が入りました。でも、年間数十万発を輸出するなんて現在の生産量では無理です。また、日本では花火工場を作るために様々な規制をクリアする必要があり、まわりに住宅地ができると引っ越さなければいけなくなります。うちの今の工場は市街地から離れた山間の奥深くですが、ここに至るまで、高度経済成長期以降の宅地開発の煽りも受けて合計4回工場を移転させました。国家レベルで花火輸出を図っている国々とは、置かれている状況が違います。