やきものの町ならではの神社

 陶山神社の創建は、江戸時代初めの万治元(1658)年にさかのぼる。

 主祭神は応神天皇。さらには、わが国の窯業創業の祖とされる李参平も祀っている。まさに、やきものの町・有田らしい神社である。

陶山神社

 頭上に群れをなす風鈴。

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風鈴が爽やかな音色を奏でる

 その涼やかな音色に迎えられるように石造の鳥居をくぐると、磁器製の灯籠が並ぶ長い石段がゆるやかなカーブを描く。その先に大鳥居がすっくと立っている。

石段の上から坂下を眺める
石段の磁器製灯籠

 高さ3.7m。磁器でできた鳥居である。淡いブルーの唐草文様が入った白磁は、夏空を背にきらきらと輝いて見える。

磁器製鳥居

 明治21(1888)年に奉納されたもので、有田を象徴する存在の一つ。国の登録有形文化財になっている。

 と、そのときだった。磁器製鳥居まで石段を上りきったところで、カン、カン、カン……と踏切の警報音が鳴り始めた。

 いや、いまから神社の入口へ戻っても間に合わない。ここは諦めて、石段の上からカメラを構える。

石段の上から遠くを走る列車を写す

 ほどなくして現れたのは、上りの普通列車。すべるように鳥居の向こうを横切っていく。神社の中を列車が走り抜ける、なんとも不思議な光景だ。ほかの参拝客も一斉にスマートフォンを列車へ向け、走り去る姿を見送っている。

 列車が通り過ぎたところで、仕切り直してお参りしよう。

 大鳥居の後方には、左右に一対の狛犬が鎮座している。

左の磁器製狛犬
右の磁器製狛犬

 これもやはり磁器製だ。阿吽の姿がなんともユニーク。白磁の美しさも相まって見応えがある。江戸時代に佐賀藩の御用赤絵師を務めた今泉今右衛門家の十代・今右衛門によって製作されたと伝わり、明治20(1887)年に奉納されたものだ。

 左手に目を向けると、今度は磁器製の大水瓶がある。高さ1.09m、直径90cmという堂々たる大きさで、明治22(1889)年の奉納。

磁器製大水瓶

 さらに同じ年には、大手水鉢も奉納されている。こちらもなかなかの存在感。

磁器製大手水鉢

 案内板によると、明治時代半ばの有田では、大型の磁器製品の制作が盛んだったという。町々が競うように、大きな磁器を陶山神社へ奉納したのだそうだ。

 境内のあちらこちらに磁器が配された陶山神社は、どこを切り取っても絵になる。磁器の美を屋外で堪能できることから「野外美術館」と称されているのも納得。

野外美術館と称される
社殿

 社殿に参拝し、ふと見上げると、掲げられた扁額も磁器製のようだ。

社殿扁額

 平日の昼間、しかも炎天下だというのに、参拝客は途切れない。とりわけ目につくのが外国人観光客の姿。やきものの町・有田ならではの景観を求めて、国内外から人が訪れているようである。

 社殿の奥には、さらに道が続いている。次の列車がやってくるまでには、まだ少し時間がある。この道を進んで、有田焼の神様に会いに行こう。