例外的な施設もある。しかし……
そのなかで、例外ともいえる施設がある。千葉県佐倉市に、1983(昭和58)年にオープンした国立歴史民俗博物館(歴博)がそれだ。東京駅から最寄りの佐倉駅までは直通でも約1時間かかり、さらに駅前からバスに乗らなければならない。そのため、アクセスがよいとは言いがたいが、国立の大規模な歴史博物館であり、近現代史も扱っている。
もっとも、開館当初からそうだったわけではない。幕末から1920年代までを扱う第5展示室(近代)は1993(平成5)年と1995(平成7)年に分けて公開され、1930年代から1970年代までを扱う第6展示室(現代)は、2010(平成22)年になってようやく公開された。
その意味では、歴史問題になりやすい昭和の戦時下は、かなり遅れて扱われるようになったと言える。戦後史もまた同館で本格的に位置づけられるまでに、長い時間を要したわけである。
そのためもあってか、戦後史の扱いは弱いと言わざるをえない。そもそも第6展示室は展示室のなかでもっとも狭く、「戦争と平和」「戦後の生活革命」のわずか2部構成なうえ、半分が戦前・戦中で占められており、戦後史自体のスペースがきわめて狭い。
しかも今年3月、第5展示室は全面的にリニューアルされ、展示内容が大幅に増強された。それまで第6展示室の一角で扱われていた日清戦争や日露戦争も、本来あるべき第5展示室に移され、解説が充実した。関東大震災における自警団による「朝鮮人殺傷事件」についても、複数の資料を掲示して取り扱っている。
これにたいして第6展示室は、第5展示室との接続の関係で満洲事変など冒頭の一部が補強されたにとどまり、全体としては古い構成のまま残されている。それだけに、日中戦争以降の記述の薄さが、かえって際立つことになってしまった。
展示のリニューアルは順次進められる以上、これはやむをえない面もある。だが、現状だと、もっとも厄介な部分をまえにして、まるで尻込みしているかのようだ。
とはいえ、永遠にこのままではありえない。関東大震災の展示と同じように、いずれ日本側の加害行為についても、より踏み込んだ記述がなされるだろう。
※本記事の全文(約11000字)は、月刊「文藝春秋」9月号と、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」に掲載されています(辻田真佐憲「歴史の『断絶』と『連続』」)。 全文では、下記の内容をお読みいただけます。
・「戦後日本とは何だったのか」という大胆な問い
・1990年代という切れ目
・「記憶戦争」の時代に
出典元
【文藝春秋 目次】芥川賞発表 受賞作全文掲載 小砂川チト「ゾンビ回収婦」/「高市総理よ、日本を壊すな」細川護熙/がん15部位 早期発見ガイド
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