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災害復旧を拒むバカの壁――なぜシステムの標準化は進まないのか

日本には1718の自治体があり、1718通りのフォーマットがある

2018/10/02

 200人を超える死者が出た7月の西日本豪雨。北海道をブラックアウト(全域停電)させた9月の北海道胆振(いぶり)東部地震。「10年に1度」と考えられてきた大規模な自然災害が立て続けに列島を襲った。旧来の「防災」では、国民を守り切れない緊急事態に、国や自治体は何をすべきか。

 政界きってのIT通で、小泉進次郎ら自民党の若手議員20人が作った「小泉小委員会」の事務局次長も務める小林史明衆議院議員と、同委員会でオブザーバーを務める「復興支援のスペシャリスト」藤沢烈氏が、国民を守る「新たな社会システム」について激論を交わした。

 

「被災者が被災者を支える」という厳しい構図に

――2011年の東日本大震災以来、災害対策の重要性は繰り返し叫ばれてきたが、依然、被災地支援はスムーズに進まない。どこに問題があるのか。

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 藤沢 まず問題なのは「支援者」と「被災者」が時間的に重なってしまうこと。災害時に被災者を支援する主体は「被災地の自治体」となっているが、自治体の職員も被災しているわけだから「被災者が被災者を支える」という厳しい構図になってしまう。

 先々週、宇和島市長にお会いしたら「被災してから、まだ1日も休んでいない」と言っていた。西日本豪雨からすでに3ヶ月近くになる。被災地支援のプロである自衛隊の人たちは現場でローテーションを組み、きちんと休む。一方、支援のプロではない自治体の職員には休むノウハウがなく、極限状態で働き続けている。

 西日本豪雨でも避難所で暮らしている間に病気で亡くなった関連死の被災者が複数いる。関連死で多いのはストレスからくる心筋梗塞と、避難所のトイレなど衛生環境が悪いことに起因する肺炎。被災者のストレスを減らし、避難所の衛生状態を良くする支援ができれば、関連死は減らせる。

 東日本大震災の後、避難訓練を増やした自治体は多いが「避難所訓練」を実施している自治体はほとんどない。トレーニング不足の状態でいきなり本番を迎えてしまうのが実情だ。

3.11以降、さまざまな災害の被災地で現場を見てきた藤沢烈氏

「被災地支援に特化したプロの行政官」を

 小林 被災地では、避難所運営や家屋の被害調査、罹災(りさい)証明書の発行など業務が膨れあがり、行政職員の数が不足する。このため総務省は2018年度から、被災自治体と支援自治体のペアをあらかじめ決めておく「対口(たいこう)支援」の制度を導入し、今回、西日本豪雨のケースで初めて適用された。

 大きな進歩だと思うが、まだ「お手伝い」のレベルに留まっており、被災自治体の職員の指示がないと動けない。自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)と同じように、有事に備え「被災地支援に特化したプロの行政官」を育てる必要があると思う。

災害が多い時期だからこそ、災害対策について考える好機だと述べる小林史明氏