1972年(昭和47年)8月、群馬県の山中にある霧積温泉を訪れた24歳の女性が、凄惨な刺殺体で発見された。全身24ヶ所の刺し傷、えぐられた心臓、折れた肋骨3本。昭和の日本を震撼させた未解決事件はなぜ起きたのか。

被害者は一人旅を楽しむ女性

 被害者の24歳女性は、群馬県伊勢崎市在住のガソリンスタンドに務めていた。本来は母親と弟との3人旅のはずが、直前に2人の急用が重なり、想定外の一人旅となった。

 8月12日、横川駅から霧積温泉の一軒宿に到着した彼女は、翌13日10時にチェックアウト。女将が「歩いたら3時間以上かかる」と引き止めたにもかかわらず、「大丈夫です。歩いて帰ります」と答え、一人で山道を下り始めた。

ADVERTISEMENT

 不思議なのは移動に要した時間だ。13時ごろ、宿から約1キロ地点で目撃された井上さんは、さらに1時間後の14時ごろには宿から約5キロ地点を歩いていた。成人女性なら15分ほどで歩けるはずの距離に、なぜ3時間もかかったのか。理由はわかっていない。

 その後、親子3人連れが「乗っていきませんか」と声をかけたが、彼女は丁重に断った。これが最後の目撃情報となる。

蠅が群がる山小屋から見つかったのは…

 消息を絶った彼女を家族が捜索し、16日に父親らが宿から約3.5キロ離れた古びた作業小屋に辿り着いた。建物に蝿が群がっていた。

写真はイメージ ©getty

 8畳間の床に重ねられたトタンをどけると、仰向けに倒れた井上さんの遺体が現れた。小屋の中には彼女の所持品43点とともに、10時9分で針が止まった腕時計が残されていた。

 県警は捜査員200人を動員し、発生から1年間で延べ8千人が懸命に捜査を続けた。しかし解決の端緒すら見出せないまま、1987年8月13日に公訴時効が成立。事件は今なお未解決のままである。

◆◆◆

「誰が撮影したんだ」被害者のカメラに残されていたのは“不気味な写真”とは……。本編は下記の関連記事からお読みいただけます。

次のページ 写真ページはこちら