〈結果が出なくて焦って、自分を追い込んでという感じでした。たまに一軍でチャンスをもらっても、そこでヒットを打てなければ二軍に落とされる。そういう立場だったので。この一打席で結果を出さなければ生き残れない。僕はその状況を乗り越えられなかったんです〉
打者としての郡司の武器は読みの的確さであった。長らくキャッチャーだったこともあって、次に相手バッテリーが何を投げてくるのかを推測できる。だが、いくら相手が読み通りの球を投げてきても郡司のバットは動かなかった。打てなければ二軍落ち。一打にかかる重さを意識すればするほど筋肉は強張り、心はブレーキを踏んだ。ボールが眼前を素通りしていく。躊躇(ためら)った自分を罰するように球審のストライクコールが耳に響く。首脳陣から告げられる二軍落ちの通告が心を萎縮させていく。何も手にできないまま、4年目の途中でトレードに出された。郡司は20代半ばで異なるリーグの、北海道を本拠地とするチームに移ることになった。それはプレーヤーとしての深い挫折に他ならなかった。
初対面での不思議な一言
2023年6月30日、今も忘れないその日、郡司は初めてファイターズの一軍のゲームに出場することになった。二軍施設のある千葉県鎌ヶ谷市から北海道北広島市に移動し、エスコンフィールドに足を踏み入れる。ロッカーに荷物を入れると、まず監督室に向かった。新庄に会うのは初めてだった。平成生まれの郡司の記憶に刻まれているイメージは奇抜なマスクを被ったり、ゴンドラに乗って降りてきたりする姿だった。あの人が今、監督になっていて、そのチームに自分が所属することになった。非現実的な感覚を拭えないままドアをノックすると、新庄は本当にそこにいた。
※この続きでは、「野球観の変化」を郡司裕也氏が語っています。約9000字の全文は、月刊文藝春秋の電子版『文藝春秋PLUS』に掲載されています(鈴木忠平「ボス新庄監督の魔法」)。
出典元
【文藝春秋 目次】東京極秘対談 ティール×トッド 世界は終末を迎えているのか/池上彰×佐藤優 “暴れ獅子”トランプと“女豹”高市の生きるか死ぬか/官邸官僚の第二の人生
2026年5月号
2026年4月10日 発売
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