嵐のように渦巻いた感情
——お答えいただきありがとうございます。では映画に話を戻しますが、イム・ヨンギュは、チョン・ヨンヒと結ばれ息子ドンファンに恵まれますが、あることからすれ違いが生じてしまいます。そのヨンギュの感情について、どのように感じましたか?
甘い、幸せな気持ちを抱いた時間は短かったと思うんですね。ヨンギュの場合は、周囲の人たちから妻ヨンヒが美しいとずっと聞かされてきたことにより、ある種の自己肯定感を高めてきた。目が見えないのにもかかわらず、美しい女性を自分の妻にすることができ、子供まで生まれて、幸せな家庭を築いている。これが彼にとってはものすごく大きな自尊心であり、自己肯定感を高めることだったと思うのですが、本当に些細なことがきっかけで、それが崩れ落ちるわけですよね。その時に彼の中では、絶望や、侮辱感などが、もう本当に嵐のように渦巻いたんだと思います。そういう渦のような感情に集中して演じていました。
——邦題の『顔』は原題の直訳ですが、英語タイトルは“THE UGLY”で、醜いという意味であり、とても象徴的です。私自身も映画が進むうちにヨンヒの顔がどれほど醜いのか、ということを期待してしまい、最後に、自分の中の嫌な部分を思い知らされました。パク・ジョンミンさんは、この醜い心というものをどう捉えていますか?
どんな人も醜い心を持っていると思うし、同時に美しい心も持っていると思います。ただし、この醜い心というのは、集団でいる時に現れやすい。悪いと分かっていても、他の人たちも同じ気持ちだと分かると、歯止めが利かなくなってしまう。さらに行動に表す人も中にはいるわけですよね。ある種の無責任な集団性の醜さだと思います。これはもう致し方なく、人類の歴史上ずっと繰り返されてきたことだと思うんです。だからこそ、映画や本が観客にそれを自覚する機会を与えるのは非常に重要なこと。だから僕はこの映画がとても好きですし、好きな理由もその点にあります。「君たちは間違っているよ」と言っているんではなく、「こういうことを一度みんなでちょっと話してみようよ」という映画ですよね。だからこそ、この映画には価値があると僕は感じているんです。


