宮藤 僕の役とは世界線が違う感じでした。映画の仕上がりを見たら、「わ、こんなにハードボイルドな作品だったんだ」と驚きました。西島さんもそうなんですけど、特に寺西は最もハードボイルド寄りな立ち位置というか。

役所 でも、本当はシリアス一辺倒の役よりも、どこか隙があって面白味がある人間が好きなんです。演じる時も、常に“おかしみ”みたいなものを探そうとしてしまうというか。例えば寺西は厳しい世界の人間ではあるけど、彼なりに元部下のことを気にかけている雰囲気を出したり、掛け合いの中に飄々とした軽さを入れてみたり。特にこの作品の登場人物は全員、背負っているものが重いから余計に、軽さやおかしみが欲しくなると思って……。その点、宮藤さん演じる明野と新ちゃんのシーンには明るい笑いがあって救われますね。温かくて、本当に神様が宿っている感じがしました。もちろん、実際にはあの親子の抱える事情はそればかりでは済まない。むしろ一番過酷かもしれない。でも、だからこそ僕は「一番汚れたところにこそ一番きれいで美しいものがある」という中島さんのメッセージを強く感じました。

 

宮藤 そうですね。「食べながら話してくれ」というのも、その重さに偏らないようにするためなのかな。

ADVERTISEMENT

役所 そこに人の生命力みたいなものを込めたのかもしれないですね。

「役所さんがコメディやりたいって言ってる!」と聞いて……

宮藤 そういえば、『いだてん』(2019年放送の大河ドラマ)で演じてくださった嘉納治五郎も、実在の偉人でしたが許される範囲で面白くしようと脚本を書いていましたけど、役所さんだから膨らんだし、あれほど味のある役になったんだと思っています。

役所 思いだけでバーッと先走っちゃう面倒臭いおじいちゃん。ああいう癖のある役は好きですねえ。演じていてすごく楽しかったです。だから、宮藤さんが「またいつか一緒にやりましょう」って言ってくださったのを楽しみに待っていたのに、その“いつか”がなかなか来なくて……。