愛知県警捜査一課で11年にわたって、20件以上の殺人事件被疑者取調べをした元捜査員が語る、殺人事件被疑者の取調べとは。

 これまでに刑事部門を歴任してきた愛知県警OBの小池勝孝さん(65)。殺人や強盗などの凶悪犯を扱う捜査一課時代には、20人以上の殺人事件被疑者の取調べを行ってきたという。そんな小池さんは、取調室でどのような殺人事件の被疑者と対峙してきたのか。第1回は、否認を続ける被疑者が「落ちる(自白する)」瞬間について。

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「取調べ監督制度」とは

「簡単に言うと、落ちる瞬間には空気が変わります」

 私が今回のテーマを口にしたところ、小池さんはそう言い切った。

「現行犯以外の計画的な殺人犯の多くは、まず自分は関係ない、犯人ではないと否認して、頑強に抵抗してきます。自身の犯行への関与については、ほとんどが虚偽の供述。主張することの多くは、辻褄の合わない嘘です。

 私が取調べをしてきた時代は、今の『取調べ監督制度』が始まる前の時代ですからね。こちらも時には大きな声で、乱暴な言葉を使いながら、理詰めで追い込むわけですよ。すると向こうも、人権侵害がどうのこうのと言ってくるわけです。そうしたやり取りを繰り返していました」

 ここで出てきた「取調べ監督制度」について説明しておくと、同制度は、「被疑者取調べ適正化のための監督に関する規則」というのが正式な名称。この制度が施行されてからは、取調室内での取調べの様子を、捜査部門以外の警察官が監督するようになった。近年、取調べの適正化を求める声が高まったことを受けて、始められたものだ。

 具体的には、警務部門や総務部門の警察官が、定期的にマジックミラーやドアスコープ越しに取調室内の様子を目視して、違法な取調べが行われていないか観察するというもの。小池さんは説明する。

「取調官は大声を出しちゃいかんし、机をたたいてもダメ。それこそ身体接触だとか、隣に座ることなんかも禁止されました。あと、利益誘導だからって、悩みを聞くこともダメだと指導されます」

 その具体例として、次のことを挙げる。