『棺桶まで歩こう』(萬田緑平 著)

 人生100年と言われて久しい昨今、どのような最期を迎えるかに関心が集まっている。そんな時代の空気を映すようにベストセラーとなっているのが本書だ。元外科医で、2000人以上を看取ってきた在宅緩和ケア医の著者が「歩けるうちは人は死なない」という独自の視点から、延命ではなく最期まで自分らしく生きるためのヒントを示し、共感を呼んでいる。

「4年ほど前に和田秀樹さんの『80歳の壁』を編集し、高齢者向けの本に手応えを感じていました。次の企画を探していたときに、著者のインタビュー記事に出合ったんです。その中にあった『棺桶まで歩こう』という言葉が強く印象に残り、『これをタイトルに本を作りませんか』と著者にお願いしたのが、企画の始まりです」(担当編集者の福島広司さん)

〈心にいいことをしたほうが長く生きてくれる〉〈がんが大きくなっても歩けるなら死なない〉〈一人暮らしのほうがむしろハッピーに死ねます〉など、思わずページをめくりたくなる見出しが並ぶ。読み進めると、水を飲まずに日本酒だけで1カ月以上元気に過ごした人や、家族一人ひとりに感謝を伝えながら旅立った4歳の子どもなど、豊富な臨床経験に裏打ちされたエピソードが本書に説得力を与え、幸せな最期とは何かを具体的に考えさせられる。

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「タイトルの強さからか、発売当初から雑誌や新聞によく取り上げられ、取材も相次ぎました。医学を否定したり、死を遠ざけようとしたりするのではなく、歩けるうちは死なないから、最期まで生き切ろうという明るいメッセージが好意的に受け取られたのだと思います」(福島さん)

 40~50代の読者も多く、「親のことを考えて読んだ」などの反響も。また、「自分の最期は自分で決めていいという当たり前のことに気づかされた」といった声も届いている。

「著者の診療所は群馬県前橋市にあり、直接足を運んで診られる範囲の患者さんしか受け付けていません。でも、ご自宅の近くで同じような志を持つ緩和ケア医がいるはずだから積極的に探しましょう、と著者は呼びかけています。本書をきっかけに在宅緩和ケアがより広く知られ、一人ひとりが最期の迎え方を自分で選べる社会になってほしいと願っています」(福島さん)

2025年11月発売。初版7000部。現在17刷15万2000部(電子含む)

棺桶まで歩こう (幻冬舎新書 790)

萬田緑平

幻冬舎

2025年11月27日 発売