これは「女たちの物語」ではない
――『魔女になりたい』には女友達とのエピソードが多く収録されているので、一見すると「女たちの物語」という見方もできます。ただし伊藤さんの中では「シスターフッド」といったラベルは本作に似つかわしくないと、以前お話しされていました。それはなぜでしょうか?
伊藤 女性であることや、女性として社会でどうあるべきか、という問題について、私はこれまで考えることを避けてきました。なぜなら自分自身が女性というよりは、「外国人」、あるいは「異物」として扱われてきた感覚がずっとあったからです。世間でよく言われている「女性が受けている痛みや差別」が、私には全くピンとこないまま生きてきてしまったというコンプレックスがあります。
一方で、女性をめぐる状況を勉強することで、別に気にしていなかったことに対して「本当は軽んじられてたんだ」「あの時私は差別されていたんだ」という認識になるのもどうしても嫌だったんです。そういう社会的な大きな物語に、自分の個人的な、個別のストーリーがさらわれてしまうのが嫌でした。私の書く本には確かに多くの女性が登場しますが、それは「女だからこういう運命を辿った」という話ではなく、あくまで一人ひとり個別の具体的な人間を描いたつもりです。そこは1作目の頃から一貫して変わっていません。
――いろいろなタイプの人が伊藤さんとさまざまな関係を築く様子が描かれていますが、伊藤さんにとって「理想の人間関係」といったものはあるのでしょうか。
人間関係についても、いわゆる“正解”は作りたくないし、「この言葉は言っちゃいけない」とか「落ち込んでたらこういう言葉をかけるべき」っていう定型的なルールも作りたくないですね。人によって、関係性によって違うはずなので。周りからどう見えるかをあまり気にしないというか、「私は悪くない」っていう自分勝手なところもあるんですけど(笑)。


