8年前、右大腿骨の骨肉腫を公表し、人工関節の移植手術と抗がん剤治療を行った塚本泰史さん(33)。「サッカーはもうできない」と宣告されても決して諦めませんでした。「人工関節を膝に入れてサッカーを続けた選手がいなかっただけで、やってみなきゃわからない」とリハビリに取り組む姿が、多くの人を勇気づけています。同じ病気の子どもたちに元気を届けたいという塚本さんの次の目標とは。
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2009年のシーズン途中から膝に痛みはあった
──2010年のメディカルチェックでがんの可能性があることがわかりましたが、その前から違和感はあったのですか?
塚本 2009年のシーズン途中から時々膝に痛みはあったんです。でも膝の痛みってスポーツ選手にはよくあることだし、そんなに気にしていなかったんですよ。夏のキャンプ時はあまりの痛さに初めてトレーニングを休むほどだったんですけど、その後も痛みが出たり引いたりしたので、様子を見ながら続けていました。2010年1月のメディカルチェックで膝が痛いことを伝え、MRI検査を受けたところ、「がんの可能性がある」と言われて、都内の病院へ再検査に行くように言われました。
──その時はどんな気持ちでしたか。
塚本 家族に「もしかしたら、がんの可能性もあるかもって言われた」と軽い気持ちで電話したのを覚えています。祖父が肺がんで亡くなっているんですけど、まさか自分ががんになるとは思ってもいなかったし、深く考えることもしなかったですね。
──紹介された病院で、がんと診断を受けたのですか。
塚本 骨髄炎だろうといわれ、生検手術を受けて検査をしてもらったら、骨肉腫と診断されたんです。先生からは悪い部分の骨を切り取って人工関節にするのが今の最善の治療法だといわれました。
──「人工関節」と聞いた瞬間はどんなことを考えましたか?
塚本 もうほんとに頭が真っ白というか何も考えられませんでした。僕の横にいた母が「サッカーできるんですか」と聞いたんですけど、「もうサッカーは難しい」とはっきり言われて、ただ涙があふれて止まらない状況でした。