静岡県沼津市などで女性2人が犠牲となった「静岡2女性殺害事件」。犯人の桑田一也死刑囚により実の母親を殺められた被害者長女が、事件から14年の時を経て初めて当時の記憶を語った。

「殺しをしてなければいい人だった」――そう振り返る彼女の複雑な胸中、そして男が隠し続けていた「いびつな二重生活」とは? ノンフィクションライターの高木瑞穂氏の文庫新刊『殺め人』(鉄人社)より一部抜粋してお届けする。(全3回の1回目)

都内某所で取材に応じる長女(写真:筆者撮影)

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長女が語る「人を2人殺したパパ」の記憶

 被害者遺族から見た男の素顔は、意外なものだった。

「母が結婚、離婚を繰り返したなかで、桑田は、父親らしいことをしてくれた唯一の人でした。私のなかでは『良きパパ』だったんです。だからこそ、なんで殺しちゃったんだろう、という思いがあるんです」

 2024年6月、当時のことを振り返り結海さん(仮名、20代前半)が事件以来、初めて語った。

 いまから14年前に起きた、女性2人を殺めた殺人事件で、桑田一也死刑囚(当時43歳)により殺められた被害者の1人、久松紘子さん(当時25歳)の長女だ。

「私が小学校1年生のころのことです。授業が終わると、よくパパが車で学校まで迎えに来てくれていました。家に着くまでのなかで、友達のことや給食のメニューのことを話したり、帰ってからも宿題を見てもらったり。そこだけ考えると、別に殺しをしてなければいい人だったし、っていう」

 なぜ母親殺しの憎き犯人を「良きパパ」と呼ぶのか。

 そう、血こそつながっていないが、母が亡くなるまで桑田も静岡・沼津市清水町の自宅アパートで一緒に暮らす家族だったからである。連れ子であっても実の娘のように優しく接してくれていたからである。こうして結海さんのなかでの桑田は「良きパパ」としてだけ強く記憶に残っていた。

 桑田は紘子さんと出会う前、別の女性Aと結婚し、子どももいた。