セクハラとは無縁、女性が元気な『噂眞』編集部
中森 新宿ゴールデン街で、岡留さんの素顔を見たことがある人は誰もいないでしょう。ところが編集部を訪れると、岡留さんはサングラスを外してデスクに座っているんです。すると目がめっちゃ優しいわけ。好々爺ですよ。
『噂眞』を蛇蝎のように憎んでいた小林よしのりは『ゴーマニズム宣言』で「おどろおどろしい怖い悪の巣窟」みたいなイメージで描いていたでしょう。実際の『噂眞』編集部はそんな雰囲気じゃないんだな。編集部では川端幹人副編集長とよく遭遇したけど、そもそも男性が少ない。
佐高 岡留自身が毎日朝まで飲んでるから、午前中なんて会社に出てくるわけがない。後にJR総連やJR東労組と革マル派の癒着を書いて巨額訴訟を起こされるフリージャーナリストの西岡研介も、神戸新聞社を退社したあと『噂眞』のトップ屋として仕事をしていました。その西岡は、デスクに張りついて内勤ばかりするタイプじゃない。外で取材していることが多いわけです。
中森 実は普段の『噂眞』編集部は、男性より女性の存在感が際立っていたんです。死んだ坪内祐三も言っていたけど、岡留さんには全然セクハラ体質がない。女の人には外でさんざんモテていたから、自分のところの編集部員をなんとかしようなんて魂胆はないわけですよ。自分の娘くらいの年齢の女性部員に説教しようなんて家父長的な姿勢も全然ない。
だから神林広恵やイイクミ(飯田久美子)といった女性編集者が、編集部で伸び伸びと仕事をしていたわけです。そこで彼女たちの手も借りず、岡留さんは一人でどこかから食材を買ってきて、編集部の隅にある小さなキッチンで自分で沖縄そばを作ってすすっているんです。
佐高 女性編集者が伸び伸び楽しそうにやっていても、岡留は「サボってないで仕事しろ」なんて発破をかけたりしないんだよね。
中森 拍子抜けするほど声が優しい。彼のあのコワモテの風貌を見たら、甲高い糾弾調のアジ演説を想像するじゃないですか。それとは真逆の癒し系なんです。だから『噂眞』に悪口を書かれて腹が立っている人でも、岡留さんと会うと拍子抜けしちゃったんじゃないかな。
あの楽観ぶりはすごい。どんなに雑誌で悪口を書いてる人と会っても「やあやあ」とニコニコ挨拶できてしまう。普通はパーティーなんかで天敵と出くわしたら、ちょっとは気まずくなるじゃないですか。
ところが、岡留さんはまるで気まずい様子がない。岡留さんは鹿児島県の末吉町(現・曽於市)という田舎生まれで、宮崎県の高校に通っているんですよね。北九州のチャキチャキしたしゃべり方じゃなくて、九州南部の朴訥とした方言が残っている。北関東訛りに似た響きもあって、独特の語り口でした。
